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Global Issues
ラーム・エマニュエル駐日米国大使の日本外国特派員協会での会見
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2月 25, 2022

2022年2月25日

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

皆さん、こんにちは。多くの方がご存じのように、私は今週末、岸田首相と一緒に広島を訪問する予定でした。同盟国として共に、戦争の恐ろしさに思いを寄せ、それを覚えておくために献花する予定でした。

広島の原爆遺産を記憶する神聖な場に共に立つ。平和と繁栄の未来構築のために共に立つ。この代わりに世界が再び目にしているのは、戦争の恐ろしさです。

プーチン大統領は世界を脅迫したのです。彼の言葉を引用すると、ロシアは「最強の核保有国の一つ」であり、「最新兵器で一定の優位性を持つ」。さらに、「万が一にも我が国に直接攻撃をしかけるようなことがあれば、いかなる侵略者も敗北し、不幸な結果になるのは明らかだ」と述べました。これは、弁明の余地のない戦争行動を擁護するために核兵器を配備するとした明らかな脅しです。

この36時間、世界はロシアによる理不尽で、根拠のない、許しがたいウクライナへの侵攻を目にしてきました。

ロシアの指導者によるウクライナ人に対するおぞましい虐待はこれが2度目です。最初は、スターリンが引き起こした人為的な大飢饉であり、そして今回はプーチンによる強制的な服従です。

はっきりと言います。ロシア政府が何と言おうと、今回の侵攻に正当性はありません。ウクライナによる挑発はありませんでした。いかなる歴史的な誤解も完全な偽情報も、ロシアの行動を正当化することはできません。

これは国際法に違反し、ウクライナの領土保全と主権、そして基本的な人間の尊厳を侵害する犯罪行為です。

過去30年において、ロシア政府は2度法的な約束をし、ウクライナに対して平和の道を歩むことを誓いました。

1994年のブダペスト覚書では、ロシアはウクライナの独立と主権、現存する国境を順守し、ウクライナに対する脅迫と武力行使を止めると約束しました。

このような安全保障と引き換えに、ウクライナはソビエト時代の核兵器を放棄しました。ロシアの保護と保証があったからです。ロシアのブタペスト覚書への違反は、裏切り行為以外の何ものでもなく、プーチン大統領は二枚舌を持った、人を欺く、腹黒い人物であることが浮き彫りになりました。

ロシアの理不尽なウクライナ侵攻は、2014年と2015年に調印したミンスク合意にも明らかに違反しています。ロシアとウクライナ、欧州安全保障協力機構(OSCE)によって調印されたこの合意は、違法な武装組織、武装した全ての外国部隊、軍事装備をウクライナ領土から撤退させることを条文の中で求めていました。

ゼレンスキー大統領は、ウクライナがこのような合意を固く順守し、ミンスク合意で定めたプロセスに建設的に貢献する準備があることを繰り返し表明してきました。しかしながら、ゼレンスキー大統領による民主主義、そしてルールに基づいた秩序を支える原則維持への追求に対して、プーチン大統領は戦争への前進で呼応しました。

教訓は明らかです。プーチン大統領にとって国際合意に対する約束とは、合意が書かれた単なる紙きれでしかありません。このような目に余る無視と行動を許すことは、無秩序状態を引き起こすだけでなく、世界の安全保障や国際秩序の制度を脅かすことにつながります。

侵攻にいたるまで、そして今なお、プーチン大統領は軍事行動を正当化しようと、偽りを延々と述べています。つまり彼は、軍事行動を正当化するための理由を探しているのです。

プーチン大統領は、ウクライナはロシアにとって安全上の脅威だと主張します。2014年にクリミアを占拠し、そして次はウクライナ国境に10万以上の兵士を集結させました。一体誰が挑発者でしょうか。

プーチン大統領は、ウクライナに住むロシア系住民の保護を主張しています。しかし、ロシア系住民やロシア語を話す人たちがウクライナ政府の脅威にさらされているという信頼性のある、第三者による報道はどこにもありません。その一方で、ウクライナ人が文化と国家アイデンティティーの抑制を受け、深刻な抑圧と恐怖の環境下に置かれているという信頼できる報道はあるのです。

プーチン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)がロシアに対して陰謀を企てていると主張していますが、NATOは攻撃ではなく、防衛のための同盟であり、その目的は加盟国を守ることです。NATO拡大はこの目的に合致して行われ、ポーランド、ルーマニア、バルト諸国、スロバキア、スロベニアの加盟の際は、自国領域内に攻撃用兵器を配備しないという慎重で意識的な決定がなされました。

プーチン大統領は、ウクライナは国家ではないと主張しています。ばかばかしい主張です。ウクライナに大使を置いていない国はありますか。どの国の大使が11時にこの場で話をし、ウクライナ大使として紹介されましたか。

正当な理由を探せば探すほど、このような主張は常軌を逸してきます。どう常軌を逸しているかと言えば、プーチン大統領は、ウクライナはユダヤ人の大統領の下でナチスが支配していると主張しているのです。

ではプーチン大統領の動機は何でしょうか。宗教や文化でロシアと親和性のある隣国のウクライナ侵攻をプーチン大統領はなぜ命じたのでしょうか。

プーチン大統領が恐れているのは未来です。軍事力よりもはるかに深遠で強大なもので、ロシアのすぐ隣の国で、個々の主権、個人の権利と自由を確実にし、それを支える制度がうまくいくことを恐れているのです。

プーチン大統領は、自由とそれを求める人民の行進に怯えているのです。21世紀のキエフ、ミンスク、アレッポ、トビリシであろうと、20世紀のグダニスク、ブタペスト、プラハ、東ベルリンであろうと、これらに共通していることは、自由の行進に怯える独裁者たちがいたということです。

プーチン大統領は、ウクライナの成功を恐れているのです。なぜなら、それはロシアのこれまでの失敗を映し出すからです。何よりも重要なのは、プーチン大統領が、明らかにロシアの体制と正反対のウクライナの成功を恐れていることです。偽情報と海外の傀儡国家を使い、そして国内の反対意見を徹底的に封じることでプーチン大統領が必死に確立してきた体制は機能しません。誰もそれに足並みをそろえてはいません。

ウクライナとベラルーシ国民の声を聞いてください。彼らは、価値観と原則のある体制を未来に求めています。香港市民と同じように、ウクライナとベラルーシ国民も、独裁主義やあからさまな権力行使を求めてデモ行進を行うことは決してありません。

ロシアの隣国は、ロシアのやり方を止めて、(西側の体制に)自分たちが望む未来を賭けているのです。プーチン大統領が心底恐れているのは、西側の経済的、政治的な考えや価値観、成功の魅力です。

国際社会は、この侵攻に賛同することはできません。もちろん賛同もしていません。日本を始めとする主要7カ国(G7)、ヨーロッパ諸国、そしてオーストラリア、韓国、ニュージーランドといったインド太平洋地域の同盟国とパートナーは、一丸となって声を上げています。

自由、民主主義、人間の尊厳、そして国際法を守るため、ロシアへの制裁を発表した岸田首相の強力で確固たるリーダーシップを歓迎し、それに深く感謝いたします。

日本は、米国、G7、欧州連合(EU)、オーストラリアと連携し、ロシアの金融機関、エリート層、企業への金融制裁発動、ビザ発給の一時停止、半導体や先端技術製品への輸出規制に迅速に踏み切りました。この対応は、ロシアにかつてないほどの経済的な打撃を与えることになります。

はっきりと言います。ロシアの戦争行為は、世界各国の指導者、そしてウクライナと団結してデモ行進を行い、国家の主権と個人の自由の尊重を訴える平和を愛する世界中の人たちから非難と批判を招いています。

事実、ロシア国内でも、プーチンの決定に抗議するデモ運動が広がっています。市民社会の報告書によると、プーチンは50以上の都市で2000人以上の自国民を反戦デモに参加したという理由で逮捕しています。これはまさしく復讐心に燃えた、怯えた独裁者が弱っていると感じた時の行動です。昔からある手口です。

今日の世界で、同盟を組むのは簡単ではありません。絶対的な正義と絶対的な悪を見極めるのは至難の業です。

ケニアのマーティン・キマニ国連大使が安全保障理事会で行った演説を興味深く読みました。キマニ大使は当然のように、外交と対話を拒否し、代わりに武力行使に訴えたプーチンの決定を批判しました。しかし、大使は単に侵攻を批判するだけでなく、世界には2種類の国があるという非常に奥深い見解を述べました。それは、明るい未来に目を向ける国と、危険な懐古の情に浸り過去を振り返る国です。

キマニ大使は安全保障理事会で次のように語りました。「(アフリカ諸国は)継承した国境で妥協することに合意した。しかし、我々は今でも、アフリカ大陸としての政治的、経済的、法的な統合を追求する。危険な懐古の念に駆られて過去を振り返る国をつくるのではなく、我々は今までどの国も、どの国民も知らなかった偉大なものに目を向けることを選んだのだ。我々はルールを守ることを選んだ。それは国境に満足したからではなく、平和の中に構築されたさらに偉大なものを求めたからだ」

これは先進国の大使の言葉ではありません。ウクライナでの決定が意味する結果を理解している途上国の大使の言葉です。なぜなら、この結果はウクライナだけにとどまらないからです。

これこそが、プーチン大統領の理不尽な侵攻の裏にある動機に他なりません。国民と隣国が平和の中に構築された偉大なもの、つまり未来を求める一方で、危険な懐古の情に浸って過去を見ている指導者の姿が見えます。

プーチン大統領の友好国を見てください。シリア、カザフスタン、北朝鮮は、全て国民を失望させている破綻国家です。

プーチン大統領は核兵器で世界を脅しています。この発言は、核兵器の恐ろしさを経験した日本にとっては特別な意味があります。この攻撃をこのまま放置することはできません。また放置することは決してありません。

米国と日本は、ウクライナとその国民、同盟国、パートナー、そして前を向く世界中の人たちと共にあります。我々は一致団結し、ロシアのあからさまな権力行使と、平和と繁栄を可能にする共通の価値観と原則を卑劣なまでに無視するやり方に対抗していきます。

60年前の1962年、二国の首脳が核戦争の直前まで行きました。キューバ危機において、2人は分別と未来に対する明確な視野、そして未来に対する責任を持ち、撤退と緊張緩和に動いたのです。

この3カ月間、あらゆる段階で、世界の指導者たちはプーチン大統領に戦争を回避する機会を提案してきました。しかし、プーチン大統領はこれらをことごとく拒否し、拒絶しました。彼はあの素晴らしい世代の指導者たちの英知を借りることができたはずです。しかし、そうはしませんでした。彼は大帝ではなく社会ののけ者になる道を選んだのです。