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Global Issues
アントニー・J・ブリンケン国務長官の演説「自由で開かれたインド太平洋」
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12月 28, 2021

インドネシア大学(インドネシア、ジャカルタ)
2021年12月14日

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

クスマヤティ博士:閣下、各国大使の皆さま、ASEAN事務総長、インドネシア大学学長、米国・インドネシア評議員会議長、ご来賓の皆さま、まず本日我々が健康で無事に、ここに集えたことを全能の神に感謝しましょう。ここデポック市のインドネシア大学キャンパスに皆さまをお迎えでき、光栄に存じます。心から歓迎いたします。

インドネシア大学にアントニー・ブリンケン米国国務長官をお迎えし、演説していただくことを大変うれしく思っています。インドネシア大学は、国名を冠したその大学名を誇りとしています。これは名誉なことですが、同時に責任も伴うものであると認識しています。

本学のビジョンは、科学、技術、文化の重要性と、これらを推進してインドネシア国民、そして世界中の人々に資することを重視しています。

ご来賓の皆さまもご存じのように、広範な影響を及ぼす複雑な問題が我々の周りで起きています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、自然災害、地球温暖化、気候変動はその一例です。こうした問題を即座に解決する方法はありませんが、さまざまな考えに触れ、着想を得て、それを提携関係や政策、行動に転化するために時間をかけることは有効だと思います。

本日は我々にとってまたとない機会です。光栄にも、アントニー・ブリンケン米国国務長官にお越しいただき、その考えを伺うことができます。さまざまな分野を代表する専門家の皆さまにご来場いただいております。さまざまな知識を組み合わせることで、何代にもわたる将来の世代を守りながら、現在直面する課題を解決するという一つの目標を達成できると心から信じています。

ご来賓の皆さま、アントニー・ブリンケン米国国務長官を温かい拍手でお迎えください。(拍手)

ブリンケン国務長官:皆さん、おはようございます。皆さんとご一緒できてうれしく思います。クスマヤティ博士、温かいご紹介の言葉をありがとうございます。しかし、私が感謝したいのはそれだけではありません。女性で初めて貴学の公衆衛生学部の学部長も務められるなど、公衆衛生の向上や次世代の医師や看護師の育成への長年のご尽力に感謝いたします。リプロダクティブ・ヘルスの研究からインドネシアの新型コロナタスクフォースでリーダーシップを発揮されたことまで、博士のコミュニティーに尽くす姿勢には大いに触発されます。ありがとうございます。(拍手)

ご来場の皆さん、おはようございます。スラマッ パギ(訳注:インドネシア語で「おはようございます」の意)。ジャカルタをまた訪問できてうれしく思います。以前国務副長官を務めたときに数回訪れる機会がありましたが、今回東南アジア最大の民主主義国を再び訪れることを楽しみにしていました。

そして、この会場にいる学生の皆さん、キャンパスに戻ってくることができてうれしいのではないですか。皆さんの多くは、このところずっとリモートで授業を受けており、また教室で授業を受けられる日を心待ちにしていると思います。今日は皆さんをキャンパスに呼び戻すちょっとした言い訳ができてよかったと思います。クスマヤティ博士やタスクフォースが、学生にキャンパスに戻ってきてほしいと思っていること、そして誰もがそれを心待ちにしていることを、私は分かっています。

本日私が、我々がここにいるのは、他のどの地域にも増してインド太平洋で起きていることが、21世紀の世界の道筋を決めるからです。

インド太平洋は地球上で最も急速に成長している地域です。世界経済の60%を占め、過去5年間の経済成長全体の3分の2を生み出しています。世界の人口の半数以上がこの地域に居住し、世界の経済大国トップ15のうち7カ国がここにあります。

さらにこの地域は見事なほど多様性に富んでいます。二つの大洋と三つの大陸から成る全域で、3000以上の言語が話され、非常に多くの宗教が信仰されています。

インドネシアのような一つの国でさえ、多様性という点以外はその本質を抜き出すのが難しいさまざまな人々が集まっています。この国のモットーはBhinneka Tunggal Ika、つまり「多様性の中の結束」ですが、米国人には聞き覚えのあるフレーズです。米国ではE Pluribus Unum、「多数から一つへ」と言います。同じ考え方です。

米国はこれまで長きにわたり、そして今も、将来も変わらずインド太平洋国家です。地理的に見てこれは事実であり、太平洋沿岸州からグアムに至るまで、米国の領土は太平洋全域に存在します。歴史的に見てもこれは事実で、米国は2世紀にわたり、この地域と貿易その他で結びついています。

今日、米国の貿易相手国として上位にある国の半数はインド太平洋の国々です。米国からの輸出の3分の1近くはインド太平洋向けであり、この地域からの対米直接投資は9000億ドルに及び、全米50州に何百万もの雇用を生み出しています。さらに、米国本土以外で最も多くの米軍兵士が駐留しているのがアジア太平洋で、地域の繁栄に欠かせない平和と安定を確保し、我々全員に利益をもたらしています。

もちろん、我々は人々によっても結びついており、そのつながりは数世代前までさかのぼります。米国には2400万以上のアジア系米国人が暮らしています。その中にはソン・キム(駐インドネシア米国)大使も含まれます。ただし、これはキム大使が、この30年間ずっとしてきたように、米国のために働くために、国外に駐在しているときは除きますが。

米国の大学で学ぶインド太平洋からの留学生は、今回のパンデミック前には77万5000人を超えていました。そして、ここインドネシア大学で学ぶ米国人学生は、留学し、働き、生活するために、これまでにこの地域にやって来た何百万もの米国人の一部にすぎません。そのうちの1人は大統領にまで上り詰めました。

インドネシアには「人間には耳は二つあるが、口は一つしかない」ということわざがあります。子どもたちは幼い頃に教えられるそうですね。これは、発言や行動する前に人の話を聞かなければならない、という意味です。バイデン政権の1年目には、インド太平洋の人々の意見をたくさん聞き、この地域とその将来についての皆さんのビジョンを理解しようと努めました。

これまでにこの地域から数々のリーダーを米国にお迎えしてきました。バイデン大統領が就任後最初にお迎えしたのは、日本と韓国からの2人の首脳でしたし、私もルトノ外務大臣をはじめ多くの外務大臣を国務省にお迎えしました。ハリス副大統領、オースティン国防長官、レモンド商務長官など多くの閣僚がこの地域を訪問しました。多くの国務省高官は言うまでもありません。

バイデン大統領は、アジア太平洋協力会議(APEC)、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議、東アジア首脳会議、そして日米豪印戦略対話(クアッド)など、主要な地域機関が開催する多国間首脳会議に参加しました。私もメコン・米国パートナーシップ閣僚会議を開催したほか、外務大臣級の会合に参加してきました。バイデン大統領は国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)開催時にグラスゴーでジョコ・ウィドド大統領と非常に建設的な会合を持つなど、海外でもインド太平洋地域の首脳と会合を重ねてきました。

しかし、我々が話を聞いているのはリーダーたちだけではありません。この地域の米国大使館や領事館では、米国の外交官たちが二つの耳を使って、学生、活動家、学者、起業家など、あらゆる方面の人々から意見を伺っています。

インド太平洋は異なる関心と考え方を持った、極めて多様な地域ですが、ここで耳にしたビジョンと米国のビジョンは多くの点で一致していることが分かりました。

この地域の人々と各国政府は、全ての国民にとってより良い機会が増えることを望んでいます。国内で、国同士で、そして世界中でつながるチャンスを増やしたいと願っています。今乗り越えようとしているパンデミックのような危機への備えを向上させたいと考えています。平和と安定を求めています。米国がプレゼンスを高め、関与を強めることを望んでいます。そして何よりも、より自由で開かれた地域を望んでいます。

そこで本日は、その共通のビジョンと、協力していかにそれを実現していくかをお話ししたいと思います。特に重点的にお話ししたい中核的要素が五つあります。

第一に、我々は自由で開かれたインド太平洋を推進します。

自由で開かれたインド太平洋について語ることは多いのですが、その意味を定義することはあまりありません。自由とは、自分が何者で誰と知り合いかにかかわらず、自らの将来を決め、自らのコミュニティーや国での出来事について意見を言えることです。自由であれば必然的に開かれた状態になります。自由な場所は新たな情報や考え方を受け入れます。異なる文化、宗教、生活様式にも寛容です。批判や内省だけでなく、刷新も受け入れます。

自由で開かれたインド太平洋を求めると言うときに我々が意味するのは、個人のレベルでは人々が自由に日々を送り、開かれた社会で生活するようになる、ということです。国のレベルでは、各国が自らの道とパートナーを選択できるようになる、ということです。地域のレベルでは、問題がオープンに対処され、ルールが透明に行き届くとともに、公平に適用され、物品・アイデア・人々が国、サイバー空間、公海を越えて自由に移動できる、ということです。

世界で最も激しく変化するこの地域が、弾圧を受けず、誰にとっても開かれた場所になれば、皆の利益になります。地域のあらゆる人々にとって良いことであり、米国人にとっても良いことです。なぜならこの広大な地域が自由で開かれているときに、米国がより安全で繁栄することを歴史が証明しているからです。ですから我々は、地域のパートナーと協力してこのビジョンの実現に努めます。

我々は、腐敗防止と透明性確保を訴えるグループや調査報道ジャーナリスト、スリランカのアドボカータ・インスティテュートのような地域のシンクタンクへの支援を続けます。このシンクタンクは米国からの支援を受け、大きな損失を出しながら事業を行う銀行や航空会社などの国有企業の公開名簿を作成し、企業改革の方策を提案しました。

政治家の中にもパートナーが現れつつあります。例えば、フィリピンのパッシグ市のビクター・ソット市長です。ソット市長は有権者が汚職事件を通報できるよう、24時間年中無休のホットラインを設置しました。これにより、公共機関による契約発注の透明性が高まり、地域社会に根差した組織が市の財源の使い方に意見を述べられるようになりました。国務省は今年、初めて全世界で腐敗防止に取り組む闘士たちを発表しましたが、彼はそのうちの1人でした。

我々はこれからも、同志である他の民主主義国から成功事例を学んでいきます。バイデン大統領が先週主催した民主主義サミットの背景には、そうした考えがあります。このサミットでは最初にジョコ・ウィドド大統領に演説していただきました。そしてインドネシアが主催した第14回バリ民主主義フォーラムでは、私もお話ししました。

また、現在ビルマで起きているような、自国民の権利を尊重しない指導者にも対抗します。同盟国やパートナーと協力して、無差別的な暴力をやめ、不当に拘束されている全ての人を解放し、無制限のアクセスを許可し、ビルマの包摂的な民主主義への道を取り戻すよう、(軍事)政権に圧力をかけ続けます。

ASEANは、全ての当事者との建設的な対話に参加するよう現ビルマ政権に求める「5項目の合意」を策定しました。この対話は、決して諦めることのない我々の目標である、ビルマ国民の意思を尊重する平和的な解決策を見つけることを目指しています。

自由と開放性を促進するもう一つの方法として、インターネットをより閉鎖的で、不完全かつ安全性の低いものにするために積極的に活動している人々に対抗して、オープンで、相互運用性のある、安全で信頼性の高いインターネットを守ることがあります。我々はパートナーと協力してこのような原則を守り、その基盤となる安全で信頼できるシステムの構築を支援していきます。今年開催された文在寅大統領とバイデン大統領との首脳会談で、韓国と米国は安全な5G・6Gネットワークの研究開発をはじめとする新興技術に35億ドル以上を投資すると発表しました。

最後に、米国は同盟国やパートナーと連携して、この地域の開放性とアクセスしやすさを維持するために、何十年にもわたり共に構築してきた規則に基づく秩序を守っていきます。

一つはっきりさせておきましょう。規則に基づく秩序を守るという目標は、いかなる国であろうと、一つの国を押さえつけるという意味ではありません。むしろ、抑圧や威嚇を受けることなく、自ら進む道を決める、全ての国の権利を守ることを意味します。米国中心の地域と中国中心の地域の争いではありません。インド太平洋全体で一つの地域ですから。この目標はむしろ、この地域と世界がこれまでに経験した中で最も平和で繁栄した時代を生み出した権利と合意を堅持することを意味します。

公海を自国のものと主張し、国営企業への補助金により自由市場をゆがめ、自らが賛同しない政策を持つ国への輸出を拒絶し、取引をやめ、違法・無報告・無規制漁業に携わる中国の攻撃的な行動に対し、北東アジアから南東アジア、メコン川から太平洋諸島に至るまで、大きな懸念の声が聞こえているのはそのためです。この地域の多くの国々が、こうした態度が変わることを望んでいます。

米国もその思いは同じです。だからこそ、南シナ海での航行の自由を確保する決意を固めています。南シナ海では、中国の攻撃的な行動により、毎年3兆ドルを超える規模の通商が脅威にさらされています。

その3兆ドルという大きな数字の中で身動きが取れなくなっているのは、世界中の何百万もの人々の実際の暮らしであり、幸福であることを思い出すべきです。公海を渡る商取引ができないとは、農家が農作物を、工場がマイクロチップを出荷できないということであり、病院が救命のための医薬品を入手できないということを意味します。

5年前、ある国際裁判所が、南シナ海をめぐる非合法で拡張主義的な権利の主張は国際法に反するとして、この主張をきっぱりと退ける法的拘束力を持つ決定を全会一致で下しました。米国と、南シナ海裁判の原告を含むその他の国々は、引き続きこのような行為に対抗していきます。これは、米国が長年のコミットメントを守り、台湾海峡の平和と安定に変わらぬ関心を持ち続ける理由でもあります。

第二に、米国は域内外でより強固な関係を構築していきます。日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、タイと条約に基づく同盟関係を深めていきます。これらの国との結びつきが、長年にわたり、地域の平和・安全保障・繁栄の基盤になってきました。これら同盟国間の協力拡大も後押ししていきます。これは、米日韓3カ国の協力を深め、オーストラリア、英国と歴史的な、新しい安全保障協力協定を結ぶことにより、我々が取り組んできたことの一つです。米国は、クアッドの再活性化により実現したように、わが国の同盟国とパートナーを結束させる方法を見つけ出します。また強力で独立したASEANとのパートナーシップも強化します。

ASEAN中心主義とは、インド太平洋に対する米国のビジョンとASEANの展望が一致していることを受け、地域への関与をより一層深めるためにASEANとの協力およびASEANを介した活動を続けることを意味します。

バイデン大統領は10月、公衆衛生や女性のエンパワーメントも含めた主要分野でASEANとの協力を強化するために1億ドル以上を拠出すると発表しました。また大統領は、今後数カ月の間にASEAN諸国の首脳を米国に招待してサミットを開催し、戦略的パートナーシップの深化について話し合う予定です。

シンガポール、ベトナム、マレーシア、そしてもちろんインドネシアといった地域のその他の国々とも戦略的パートナーシップを強化していきます。私が今回この地域を訪問しているのはそのためです。

国民同士のつながりも深めています。東南アジアの若い世代のリーダーを育成する代表的プログラムのYSEALI(東南アジア若手指導者イニシアチブ)のメンバーは15万人を超え、増え続けています。

最後に、インド太平洋地域の国々との関係を、その他の地域、特にヨーロッパでの比類のない同盟およびパートナーシップ体制と結びつけるよう取り組んでいきます。欧州連合は先ごろ、米国のビジョンと緊密に連携するインド太平洋戦略を公表しました。北大西洋条約機構(NATO)は、インド太平洋の重要性の高まりを反映し、気候危機が安全保障にもたらす影響などの新たな脅威に対処するために、戦略概念の更新を進めています。またパートナーとの連携の中心に、ASEAN中心主義を据えようとしています。我々はわずか数日前、英国でのG7(外務・開発)大臣会合でそれを実行し、初めてASEANの大臣と会合を持ちました。

こうした取り組みをしている理由は単純です。全ての課題に取り組み、好機を捉え、目標に向かって努力するために最も幅広く、効果的な連合を組むことにつながるからです。共通の利益の下に共に力を結集できる国が増えれば増えるほど、我々は皆強くなれます。

第三に、我々は広範囲にわたる繁栄を推進します。米国のインド太平洋地域への直接投資額はすでに1兆ドルを超えています。そしてこの地域は、さらなる拡大を明確に求めています。我々はこうした求めに応じる所存です。バイデン大統領の指示の下、共通の目標を追求するために包括的なインド太平洋経済枠組みを構築しようとしています。貿易やデジタル経済、技術、強じんなサプライチェーン(供給網)、脱炭素化とクリーンエネルギー、インフラ、労働基準など利益を共有する分野を網羅する枠組みです。

これにあたり、米国の外交が重要な役割を担います。米国企業が自力で見つけることのできない機会を見つけ、その専門知識と資金を新たな場所やセクターに容易に投入できるようにします。インド太平洋各地の米国大使館など米国の外交団はすでにこの仕事を進めており、取り組みを拡大できるよう体制を増強するつもりです。米国がインドと共同議長を務めた今年のインド太平洋ビジネスフォーラムには、この地域から2300人を超える官民のリーダーが参加してくれました。そこで我々は、新たな民間セクターのプロジェクトに約70億ドル拠出することを表明しました。

わが国はパートナーと共に、データの機密性や安全性などの重要な課題について、成長するデジタル経済のルールを策定しますが、その際には、米国の価値観を反映し、米国民に機会を開放する方法を取ります。米国がこうしたルール作りをしなければ、他の国が作ってしまうからです。しかも、我々の共通の利益や価値観を推進しないような形を取る可能性が高いのです。

11月のAPECでバイデン大統領は、この地域で前進するための共通の道を作り出す方法について明確なビジョンを示しました。デジタル技術については、相互運用可能で信頼性が高く、安全な開かれたインターネットの必要性と、サイバーセキュリティへの投資や全ての参加国・地域の経済が将来的に競争していくためのデジタル経済の基準策定に米国が強い関心を持っていることについて話をしました。タイ米国通商代表と私が11月のAPEC閣僚級会合に米国代表団を率いて参加したときには、技術が自由で開かれたインド太平洋に資する必要性を強調しました。

米国は公正で強じんな貿易も推進していきます。一例として、米国が支援した、域内全域の通関手続きを単一のシステムで自動化するプロジェクト「ASEANシングルウィンドウ」があります。このシステムにより貿易の透明性と安全性が高まって貿易手続きが効率化し、企業コストと消費者価格が下がりました。通関手続きを紙ベースからデジタルベースに移行することで、ロックダウン(都市封鎖)期間中も国際貿易を続けることが可能になります。

パンデミックの1年目、このプラットフォームを積極的に活用していた国々の貿易活動は20パーセント増加しましたが、実はその他ほとんどの国の国際貿易は減少していました。10月の米国ASEAN首脳会議でバイデン大統領は、シングルウィンドウへの米国の一層の支援を約束しました。わが国はパートナーと協力し、サプライチェーンをより安全で強じんなものにしていきます。パンデミックにより、マスクやマイクロチップの不足、港で山積みになった貨物など、サプライチェーンがいかに脆弱か、その寸断がどれほどの被害を与えるかが、皆よく分かったと思います。

わが国は国際社会の力を結集してボトルネックを解消し、将来のショックに備えて強じんさを高める取り組みを主導してきました。バイデン大統領はサプライチェーンの強化に関する首脳会議を開催しました。ハリス副大統領がこの地域を訪問したときには、この問題を会合の中心議題の一つとしました。レモンド商務長官は先日の各国歴訪で、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシアとこの問題に取り組みました。タイ米国通商代表は関係省庁が参加するサプライチェーン・タスクフォースを立ち上げ、日本、韓国、インド訪問時にこの問題を取り上げました。来年には私はレモンド商務長官と共に、世界各国の官民のリーダーを集めてグローバル・サプライチェーン・フォーラムを開催し、こうした問題に対処するつもりです。世界の製造と商取引の多くを扱うハブとして、このインド太平洋地域は、こうした取り組みの中核を担っていくでしょう。

最後に、我々はインフラの不足を解消するお手伝いをします。ニーズと実際に提供されているインフラの間に大きな隔たりがあるのは、この地域だけではありません。世界中で見られます。港湾、道路、電力網、ブロードバンド――これら全ては世界の貿易、通商、ネットワークの接続性、機会、繁栄にとって基本的な要素です。そしてインド太平洋地域の(全ての人に恩恵をもたらす)包摂的な成長にとって欠かせません。しかし、インド太平洋の政府関係者、産業界、労働者、コミュニティーからは、インフラ整備が正しく行われていない場合に生じる結果について懸念の声が聞こえており、それはますます高まっています。例えば、不透明で不正なプロセスで発注が行われたり、自国の労働者を輸入し、資源を搾取し、環境を汚染し、コミュニティーを借金漬けにする海外企業がインフラを建設したりする場合です。

インド太平洋諸国は質の高いインフラを望んでいます。しかしその多くが、それには費用がかかりすぎると感じていたり、あるいは他者が決めた条件に基づく損な契約であっても、全く契約をしないよりは契約を結ぶべきだというプレッシャーを感じていたりします。そこで米国は地域の国々と協力して、人々が受けるに値する、質と基準が高いインフラを提供していきます。実は、この取り組みはすでに始まっています。

ちょうど今週、オーストラリアと日本と共に、ミクロネシア連邦、キリバス、ナウルとパートナーシップを組み、これら太平洋諸国へのインターネット接続を向上させる新たな海底ケーブルを敷設することを発表しました。2015年以降、クアッド参加国は地域のインフラ建設に向けた政府の資金支援に480億ドル以上を提供してきました。これを使って30カ国以上で、農村開発から再生可能エネルギーまで、何千件ものプロジェクトが実施され、何百万もの人々が恩恵を受けました。

クアッドは先ごろ、インフラ整備への投資を促進する調整グループを立ち上げました。またインフラ整備やその他多くの共通の優先課題で東南アジアと連携したいと考えています。米国の取り組みはこれにとどまりません。わが国がG7諸国と共に6月に立ち上げた「ビルド・バック・ベター・ワールド(世界のより良い回復)」は、今後数年間で何千億ドルもの資金を透明で持続可能な形で提供することを約束しています。またオーストラリア、日本と共に、G20、OECDなどが策定した基準を満たす、質の高いインフラプロジェクトの認証を開始し、新たな投資家を募るブルー・ドット・ネットワークを発表しました。

第四に、我々はより強じんなアジア太平洋の構築を支援します。新型コロナと気候危機で、この課題の緊急性が浮き彫りになりました。パンデミックにより、域内の何十万もの人々が命を失い、ここインドネシアでは14万3000人が犠牲になりました。加えて、工場閉鎖や観光業がストップするなど、経済的にも大打撃を受けました。

米国は国内でパンデミックと闘いながらも、そのあらゆる局面でこの地域の人々と共にありました。米国が世界中に分配した3億回分の安全で有効なワクチンのうち、1億回分以上をインド太平洋地域に送っています。うち2500万回分は、ここインドネシア向けでした。来年末までには、世界中に12億回分以上を供与できる予定です。さらに、人命を救うためにこの地域に28億ドルを超える追加支援をしており、その中には、個人用防護具から医療用酸素まであらゆるものを提供する、インドネシアへの7700万ドルの支援も含まれています。こうした援助は無償・無条件で実施しています。COVAXを通じた支援を最大限に活用することで、政治的駆け引きではなく必要性に基づき、こうした支援が公平に分配されるようにしています。

それに加えて、米国はパートナーと協力して、パンデミックの収束に取り組んでいます。この取り組みでは、クアッド・ワクチン・パートナーシップが重要な役割を担っています。資金調達やワクチンの製造・分配、できるだけ早く、できるだけ多くの人への接種を実現するために協力しています。個々の国々も立ち上がっています。インドは先ごろ、2022年末までに追加で50億回分のワクチンを製造することを約束しました。韓国とタイもワクチンを増産しています。

民間の力も借りようとしています。先月私が主催した閣僚会合では、グローバルCOVIDコー(Global COVID Corps)を立ち上げました。これは、途上国での物流やワクチン関連の取り組みを支援するために専門知識やツール、能力を提供する主要企業の連合体です。これには、実際にワクチンを接種するために非常に重要なラストマイル(物流の最終区間)問題への取り組みも含みます。この問題は世界中で拡大しています。ワクチンの増産が進み、提供されているにもかかわらず、ラストマイルの配送が困難なために接種に至っていない、という問題です。これは解決しなければならない物流の問題であり、我々はこの点に力を入れています。

同時に、我々は新型コロナウイルスと闘いながら、次のパンデミックを防ぎ、検知し、これに対処するために、インド太平洋、そして世界各地でより良い医療制度を構築しようとしています。実際にどうすればいいかは、もう分かっています。米国は何十年にもわたり、地域の医療制度の強化に向けパートナーと協力してきました。ASEANだけでも過去20年間に公衆衛生に35億ドル以上を投資し、公衆衛生を大幅に向上させ、現場で強固な関係を構築するという二つの点で、多くの成果をあげました。

米国のASEAN支援の一環として、バイデン大統領は先ごろ、米国ASEAN健康未来イニシアチブ(U.S-ASEAN Health Futures Initiative)に4000万ドルを拠出すると発表しました。このイニシアチブは、共同研究の加速、医療制度の強化、次世代の医療従事者の育成に貢献するでしょう。

米国はまた、ASEAN公衆衛生緊急調整システム(ASEAN Public Health Emergency Coordination System)の発展も支援しています。これは、地域の国々が将来の公衆衛生上の緊急事態への対応を調整する際に役立つシステムです。今年の夏、ハノイに開設した米国疾病予防管理センター初の東南アジア地域事務所はすでに、現場での取り組みを支援しています。

気候危機が協力して取り組まなければならない、もう一つのグローバルな課題であることは言うまでもありません。インド太平洋全域の人々はすでに、その壊滅的な影響を感じています。世界の自然災害の70パーセントがこの地域で発生し、2019年には地域の9000万人以上が気候関連の災害に見舞われました。その翌年、米国の太平洋岸のカリフォルニア州では、同州史上最も大きな山火事6件のうち5件が発生しました。

COP26が合意した意欲的な約束を見れば分かるように、地域最大の排出国の多くは今すぐ行動しなければならないことを認識しています。グラスゴーでは、インドネシアをはじめとするインド太平洋の15カ国が、今後10年間で排出量の30パーセント削減を約束するグローバル・メタン・プレッジ(Global Methane Pledge)に署名しました。最大の排出国が全て参加すれば、温暖化の緩和という点で、全ての船舶の航行や全ての航空機の運航をやめるよりも効果的でしょう。

しかし、脅威というプリズムだけを通して気候について考えるのは間違っています。なぜなら、地球上の全ての国は排出を削減し、避けることのできない気候変動の影響に備えなければならないからです。必要とされる、新たな技術や新たな産業への転換は、新たな高賃金の雇用を生み出す千載一遇のチャンスにもなります。

我々は、この好機がインド太平洋全体にもたらされると信じており、すでにパートナーと協力してその機会を捉えようとしています。過去5年間だけで、米国は地域の再生エネルギーに70億ドル以上を投資してきました。この取り組みを強化する中で、我々は国際組織や支援団体、企業や慈善団体、研究者や技術専門家などと、さまざまな、他に類を見ないパートナーシップを構築してきました。

今月開始するクリーン・エッジ・イニシアチブ(Clean EDGE Initiative)について考えてみましょう。このイニシアチブは米国政府と民間の専門知識と革新的アイデアを結集して、域内全域でのクリーンエネルギー・ソリューションの推進に役立てようとしています。他にも、バイデン大統領が先ごろ約束した、米国ASEAN気候未来イニシアチブ(U.S.-ASEAN Climate Futures Initiative)への2000万ドル以上の拠出、あるいは米国国際開発金融公社が先週発表した、インド・タミルナードゥの太陽光発電モジュールの製造施設建設を支援する5億ドルの融資があります。

米国企業のファースト・ソーラー社が建設中のこの工場の年間生産能力は3.3ギガワットになる予定で、200万以上の世帯に電力を供給するのに十分な能力です。この施設の建設と稼働がインドに数千の雇用を生み出し、その多くは女性の雇用となるでしょう。加えて米国でも数百の雇用を生み出します。これは、2030年までに再生エネルギーの能力を500ギガワットにまで高め、世界が気候変動による壊滅的な状況を避ける手助けをするという意欲的な目標をインドが達成するために米国が行う支援の一つにすぎません。

たとえグリーンエコノミーへの転換によって雇用が大きく増加しても――そしてそうなると確信していますが――こうして生まれた新たな職に就くのが全て、この転換期に旧来の産業で職を失った労働者であるとは限りません。ですから、我々は誰も置き去りにしないという責務を負っているのです。

最後になりますが、第五に、我々はインド太平洋の安全保障を強化します。脅威は進化しており、それと共に我々の安全保障の取り組みも進化しなければなりません。暴力的過激主義から違法漁業、人身取引に至るさまざまな課題に取り組むために、民間の安全保障上の協力関係をより緊密化することを目指します。そして外交、軍隊、インテリジェンスといった国力の手段を総動員して、わが国の同盟国やパートナー諸国のそれとより緊密に組み合わせる戦略を採用します。ロイド・オースティン国防長官はこれを「統合的抑止」と呼んでいます。

これは、何十年にもわたりこの地域で行ってきたように、平和を守るために国力を強化することを意味します。我々はインド太平洋での対立を望んでいません。だからこそ、朝鮮半島の非核化という最終的な目標を定め、北朝鮮との間で真剣に長期にわたる外交関係を築こうとしています。拡大抑止力を強化しながらも、調整された現実的な取り組みを通じて、北朝鮮の核およびミサイル計画が及ぼす脅威に対処するため、同盟国やパートナーと協力していきます。

だからこそバイデン大統領は先月、習(近平)主席に対し、米中は両国間の競争が対立に向かわないようにする重大な責任を共有していると伝えました。我々はこの責任を最も厳粛に受け止めます。なぜならこれに失敗すれば誰にとっても悲惨な結果になるからです。

1962年2月14日、当時のロバート・ケネディ米国司法長官がこの大学で演説をしました。彼は、人々が共有する永続的な闘争を、本日ここにいる学生のような若者が続けていかなければならないと語りました。そして、世界に向けた米国のビジョンについて兄である当時のジョン・F・ケネディ大統領が述べた言葉を引用しました。ケネディ大統領はこう言いました。「我々の基本的な目標は変わりません。平和な世界です。他国の自由を脅かさない限り、自由に自らの将来と制度を選択できる、自由で独立した国々から成るコミュニティーです」

ケネディ大統領がこのように述べてから70年近くたつ間に多くのことが変化しましたが、驚くべきことに、このビジョンは我々が今共有するビジョンと多くの点で一致しています。学生の皆さんや、若者を対象にした米国のリーダーシップ・プログラムにかつて参加した大勢の方々を前に、この大学でこのことについてお話しできてとてもうれしく思います。なぜなら皆さんが、これからもこのビジョンを推進していくからです。その際には、米国も含めインド太平洋地域には、希望や運命を皆さんと共有し、我々が共有するインド太平洋をより開かれた自由な地域にするための揺るぎないパートナーになる人々がいることを忘れないでください。

ご清聴ありがとうございました。(拍手)