2018年国別人権報告書―日本に関する部分

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です

米国国務省民主主義・人権・労働局
2019年3月13日

エグゼクティブ・サマリー

日本は、議院内閣制を採用する立憲君主制国家である。2012年、自由民主党の安倍晋三総裁が首相に就任した。2017年10月に実施された衆議院議員選挙は自由かつ公正とみなされ、安倍総裁の自由民主党が大差で勝利した。

文民当局は治安部隊に対する実効的な統制を維持した。

人権の懸念事項に、誹謗中傷に関する刑法があったが、政府が本報告書期間中にこれらの法律を乱用し、公的議論を制限した証拠はなかった。

政府は人権侵害を禁止する法律を執行し、侵害行為を行った政府職員を訴追した。

第1部 個人の人格の尊重(以下の状況からの自由)

  1. 恣意的な人命のはく奪およびその他違法な、または政治的動機に基づく殺人

    政府またはその職員による、恣意的、または違法な人命のはく奪は報告されなかった。

  2. 失跡

    政府当局により、あるいは政府当局の意向を受けた失跡の報告はなかった。

  3. 拷問およびその他の残酷、非人道的、または屈辱を与えるような処遇または処罰

    法律はこのような行為を禁止しており、政府職員がこうした行為を行ったという報告はなかった。

    日本政府は依然として、死刑囚に対し、死刑執行日に関する情報を事前に提供せず、死刑囚の親族に対しては、死刑執行後、その事実を告知した。政府は、この方針は受刑者に自分の死期を知る苦しみを与えないものであると考えた。権威ある心理学者の中にはこの論理を支持する者もいたが、異議を唱える者もいた。

    また当局は通常、死刑囚を死刑執行まで単独室に収容するが、親族、弁護士、およびそれ以外の人々による面会を認めている。このような単独室での収容期間は事例によって異なり、数年間にわたる場合もある。ある非政府組織(NGO)関係者によると、死刑となり得る犯罪で訴えられた受刑者は、裁判前も単独室に収容されていた。

    国家公安委員会の規則は、警察官が被疑者に接触すること(やむを得ない場合を除く)、物理的な力を行使すること、脅迫すること、被疑者に長時間一定の姿勢を取らせること、言葉で虐待すること、自白を引き出すために被疑者に好ましい申し出をすることを禁止している。日本弁護士連合会は、いくつかの事例において当局が違法または不当な取り調べを続けたと主張した。

    防衛省は10月19日、2017年4月から2018年3月末までの間に、他の自衛隊員に対して恣意的な制裁を加えたとして114人の自衛隊員を懲戒処分にしたと報告し、同省および自衛隊は再発防止のため引き続き措置を講じていくと述べた。

  4. 刑務所および収容施設の状況

    刑務所の状況は、全般的に国際基準に合致したものであったが、いくつかの施設では医療体制が不十分で、冬季の暖房または夏季の冷房に不備があり、中には過密状態の施設もあった。

    物理的な状況

    法務省は(入手可能な直近のデータである)2016年末時点で、76カ所の刑務所のうち1カ所(女性用刑務所)は定員超過だったと報告した。当局は、刑務所や通常の収容施設では20歳未満の未成年者を成人とは別に収容した。

    7月24日、男性受刑者が名古屋刑務所内で、過去最高気温を記録した猛暑の中で熱中症のため死亡した。同受刑者が収容されていた単独室には空調設備がなかった。法務省は7月27日、全ての矯正施設は適切な熱中症対策を講じていたと述べた。日本弁護士連合会は8月、法務省に対して、受刑者の命を守るため、空調設備のないほとんどの刑務所に空調設備を速やかに設置するよう求めた。

    国内の一部のNGOによると、ほとんどの施設では、暖房の代わりに衣類や毛布が追加して与えられたが、受刑者を寒さから守るには不十分だった。東京の外国人受刑者は引き続き、寒さに長期間さらされたために重度の異なるしもやけができた手足の指を見せた。

    2016年4月から2017年3月末まで、独立性を持つ視察委員会は、刑務官の受刑者に対する暴言、不十分な医療措置および衛生の事例を文書に記録した。法務省によると、2017年の矯正医官の数は21人増の275人となったが、依然として20%以上定員割れしていた。警察および刑務所は精神疾患の治療が遅く、精神科の治療を提供するための手続きがない。外国の専門家はまた、歯科治療は最低限のものしか提供されず、終末ケアや緩和ケアが行われていないと指摘した。

    管理

    当局は受刑者と被勾留者が検閲を受けることなく司法当局に苦情を申し出、問題があると主張する状況の調査を要求することを認めていたが、調査結果については、最終結論以外の詳細がほとんど書かれていない書簡を受刑者に送っただけだった。刑務所を監察する行政監察官は存在しなかったが、独立性を持つ委員会(下記「独立した監督」を参照)がその役割を果たした。

    独立した監督

    政府は全般的に、NGOおよび国際機関による視察を許可した。

    刑事収容施設法令では、法務省が管理する刑務所および拘置所と警察が管理する留置施設を、独立性を持つ委員会が視察する旨、規定されている。当局は、医師、弁護士、地方自治体職員、地域住民で構成される委員会が、刑務官の立ち会いなく被収容者と面接することを認めた。

    法律により、入国者収容施設についても第三者による視察委員会が視察を行い、委員会が提出した意見に関し、概して真摯(しんし)な検討が行われた。

    国内外のNGOおよび国際機関は、この手続きが刑務所の視察にかかる国際的な基準を満たしていないと引き続き指摘した。その証拠として、法務省が視察委員会の全支援業務を管理していること、被収容者との面接時に法務省の通訳を使うこと、委員会の構成が透明性に欠けていることを挙げた。

  5. 恣意的逮捕または留置・勾留

    法律により恣意的逮捕や留置・勾留は禁止されている。国連人種差別撤廃委員会による8月の報告書によると、市民社会団体は警察が外国人イスラム教徒に対する民族的プロファイリングおよび監視を行っていると報告した。

    警察および治安維持機構の役割

    国務大臣がその長を務める政府機関である国家公安委員会が警察庁を管理し、都道府県公安委員会が都道府県警察を管理する。政府は権利の乱用および汚職を捜査し、処罰する効果的な制度を有していた。2018年には、治安部隊に関係する刑事免責の報告はなかった。一部のNGOは、都道府県の公安委員会が警察機関からの独立性に欠けている、または警察機関に対する十分な権限を持たないと批判した。

    逮捕手続きと被拘禁者の処遇

    当局は、正当な権限を持つ当局者が証拠に基づいて発付した令状により公に個人を逮捕し、被拘禁者を独立した司法制度の下で裁いた。

    法律により、被勾留者、その親族、または代理人は、裁判所に対して、起訴された被勾留者の保釈を請求することができる。起訴前の保釈は認められていない。NGOは、不正行為ではあるが、取調官が被勾留者に対し、自白と引き換えに刑期の短縮や執行猶予を申し出ることもあったと述べた。

    起訴前に勾留されている被疑者は、取り調べを受けることが法的に義務付けられている。警察庁の指針により、取り調べ時間は1日最長8時間に制限され、夜通しの取り調べは禁止されている。起訴前の被勾留者は、必要であれば、国選弁護人との少なくとも1回の接見を含め、弁護人と接見することができる。しかし、取り調べ中に弁護人が同席することは許されていない。

    法律により、被疑者が逃亡する、あるいは証拠を隠匿または隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある場合、警察は被勾留者が弁護人および領事(被勾留者が外国人の場合)以外の人物と面会することを禁止できる(第1部d.起訴前の勾留を参照)。薬物犯罪の容疑をかけられている被勾留者の大半を含む、多くの被勾留者は、起訴前までこの制約を受けたが、収容施設職員立ち会いのもと親族からの面会を許可された者もいた。犯罪の種類と、当局が親族やその他の者による被勾留者への面会を拒否できる期間との間には法律上の関連性はない。しかし、薬物犯罪の容疑をかけられている被勾留者については、検察官が、親族やその他の者との接触が取り調べの妨げになると考え、他の被疑者と比べ長い間、面会を拒否する場合が多かった。

    日本弁護士連合会は、被疑者は主に録音・録画されていない取り調べ中に強制的に自白させられたと引き続き主張し、全ての事案で取り調べの全過程を録音・録画することを求めた。凶悪犯罪、知的あるいは精神障害のある被疑者に関わる事案、その他の事案などに関して、検察庁および警察が試験的に取り調べの全過程を録音・録画することが増えてきた。しかし、録音・録画は義務ではなく、このような慣行に対する独立した監督は行われなかった。

    警察の監察部門は、取り調べに関する指針の違反者を懲戒処分としたが、警察庁は関連する統計を公表しなかった。

    起訴前の勾留

    当局は通常、逮捕から起訴前の最初の72時間まで、警察が運営する留置施設に被疑者の身柄を拘束した。法律では、そのような勾留は、ある人物が罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由があり、かつ証拠の隠匿もしくは隠滅、または逃亡のおそれがある場合に限られるが、起訴前の勾留は日常的に行われていた。裁判官は逮捕から72時間が経過する時点で被疑者を面接した後、起訴前の勾留期間を10日間ずつ、最長20日間まで延長できる。検察官はこの延長を日常的に請求し、許可を得た。暴動、外国からの侵略、暴力的な集会などの例外的な事案の場合、検察官はさらに5日間の延長を請求できる。

    裁判官が習慣的に検察官の勾留延長請求を認めたがゆえ、「代用監獄」として知られる起訴前の勾留は通常23日間続いた。NGOは、被疑者を代用監獄に勾留する慣行は継続して行われていたと報告した。NGOおよびこの分野の外国の専門家は、代用監獄の被勾留者の中には、弁護人や、外国人の被勾留者の場合は自国の領事との接見以外は、他の者との接見を許されなかった者がいた、と引き続き報告した。2018年の被勾留者のほとんど全ては、代用監獄に勾留された。代用監獄の他、外国人被勾留者への起訴前の勾留延長が問題となった。例えば、ある者は27カ月超も身柄を拘束され(2018年9月現在)、中には裁判することなく1年超にわたり身柄を拘束された者もいた。このような事例では、検察官が複数回変わり、裁判日程は再調整されたり延期されたりした。また被告の弁護人によると、裁判のさらなる遅れや、裁判員制度で一般的な起訴前の追加打ち合わせの正当な理由とならなかった事柄を捜査する「追加時間」を、検察官は引き続き要求した。

  6. 公正な公開裁判の拒否

    法律により、独立した司法制度が規定されており、日本政府は、全般的に司法の独立性と公正性を尊重した。

    審理手続き

    法律により、公正で、公開された裁判を受ける権利が与えられおり、独立した司法制度により、全般的にこの権利は行使された。被告は、有罪と証明されるまで推定無罪とみなされるが、NGOおよび法律家は、実際に被告が法手続きの間、推定無罪とみなされているかどうかについて、引き続き疑問を呈した。2018年10月3日、広島高等裁判所岡山支部は、2017年に器物損壊の罪で起訴された女性に無罪判決を言い渡し、犯行の証拠はないと述べ、目撃者の証言を信用できないとして却下した。起訴された女性は、後に報道機関に対して、警察と検察は誤った告発を認めるよう強要したと語った。日本政府は、有罪判決は主に自白に基づいて下されているのではないこと、および取り調べに関する指針は被疑者が罪の自白を強要されない旨を規定していると引き続き主張した。

    被告は自らにかけられた容疑について速やかに、詳細な情報を知らされる権利がある。起訴された個人はそれぞれ、遅滞なく裁判を受ける権利(ただし、外国の専門家は、精神疾患を患う被勾留者の裁判は無期限に延期されることがあり、また外国人被勾留者への起訴前の勾留延長が問題となっているとことを指摘した)、貧困にある場合に提供される国選弁護人を含め、弁護人を得る権利、ならびに反対尋問の権利が与えられている。重大な刑事事件に関しては裁判員制度が置かれており、被告は自己に不利益な供述を強要されない。刑事事件の被告が外国人である場合は、当局が、無償の通訳サービスを提供した。民事事件で被告となった外国人は、通訳費用を負担しなければならないが、裁判官は裁判所の判決を踏まえ、その費用の支払いを原告に命じることができる。

    被告は弁護の準備、証拠の提示、および上訴のため、自らの弁護人を選任する権利を与えられている。裁判所は弁護士会を通じて、被告による弁護人の選任を支援することができる。弁護人費用を負担できない場合、被告は国選弁護人を要求できる。


    一部の独立した立場の法律学者によると、審理手続きは検察側に有利となっている。この分野の専門家は、弁護人が依頼人との面会時の電子的な録音・録画機器の使用を禁止されていることで、相談・助言の有用性が損なわれていると述べた。また法律では、被告側の弁護人が開示手続きに関する厳しい条件を満たす場合を除いて、検察官による資料の全面開示を義務付けていないため、被告側に有利な資料の隠蔽につながる可能性がある。

    政治囚と政治的被拘禁者

    政治囚または政治的被拘禁者が存在するとの報告はなかった。

    民事司法手続きと救済

    民事事件に関しては、独立した公正な司法制度がある。個人は、人権侵害に対する損害賠償、あるいは人権侵害の中止を求める訴訟を起こすことができる。不正行為の申し立てに対しては、行政による救済措置と司法による救済措置の両方がある。

  7. プライバシー、家族、家庭、または信書に対する恣意的または違法な干渉

    法律により上記のような行動は禁止されており、日本政府がこれらの禁止行為の規定の順守を怠ったという報告はなかった。


第2部 市民の自由の尊重


  1. 報道の自由を含む表現の自由

    独立した報道機関および機能する民主的政治制度は、本報告書の期間中、表現の自由を維持した。しかし、ジャーナリストの国際組織、国境なき記者団は、「ジャーナリストは、伝統や経済的な利害のため、民主主義の監視機関としての役割を十分に果たすことが困難と判断している」と指摘した。憲法により表現の自由が規定されており、日本政府は、こうした権利を尊重した。

    表現の自由

    報道とNGOの報告によると、特にインターネット上で、マイノリティおよびその擁護者を対象としたヘイトスピーチが増えた。ヘイトスピーチに関する法律は、伝統的に日本人ではない人に対する差別的な言動のみに適用され、一般国民への反ヘイトスピーチ教育および啓発に限定されている。罰則はない。下記に述べるように、検察官は、名誉毀損に関する別の法律を適用して、ヘイトスピーチの容疑で過激派団体を起訴した。さらに地方自治体レベルでは、右派団体が「コリアタウン」近隣で反韓の公開イベントを頻繁に実施している大阪市および京都府、ならびに川崎市や東京都でも条例やガイドラインを制定し、ヘイトスピーチを規制している。

    4月、京都地方検察庁は、京都の北朝鮮系列の朝鮮学園に対して侮辱的な発言をインターネット上かつ公に行ったとして、極右団体「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の元幹部の西村斉を、名誉毀損罪で起訴した。学校経営者の弁護人は、2009年に別の在特会メンバーが同様の事件で告発された民事訴訟よりも刑罰が重い刑法での名誉棄損罪を求めた検察の決定を歓迎した。

    出版および報道の自由

    この件に関する立件はなかったが、法律により政府は特定秘密に指定された政府情報を出版もしくは公表した者を告発することができる。有罪判決を受けた者は、最長5年の懲役かつ500万円(4万4000ドル)以下の罰金が科せられる。

    NGOは、右派団体がソーシャルメディアを用いて反政府的もしくは愛国心がないと思われるジャーナリストに嫌がらせを行ったと報告した。2017年6月、意見および表現の自由の権利に関する国連特別報告者は、日本政府の報道機関に対する圧力が、ジャーナリストによる報道の自己検閲を引き起こしたとして、「重大な憂慮すべき兆候」と報告した。日本政府は国連の報告書に強く異議を唱え、ある政府高官は報道機関に「表現の自由と知る権利は日本国憲法の下で十分に守られている。日本政府は報道機関に違法に圧力をかけたことは一度もない。これ[同報告書の主張]は全く事実に反する」と述べた。

    検閲または内容の制限

    報道機関は、明白な制限を受けることなく、さまざまな意見を表明した。記者は、政府関係者に対して非常に批判的な記事を多数報じた。国境なき記者団の「世界報道の自由度ランキング2018年版」は、「記者クラブ」制度が自己検閲を助長している可能性について指摘した。こうした記者クラブは、省庁などさまざまな組織内に設置されており、フリーランスおよび外国人の記者を含む、記者クラブ非加盟者による省庁などの組織に対する取材を妨げる可能性もある。

    名誉毀損・中傷法

    名誉毀損は刑事上ならびに民事上の違法行為にあたる。法律は、発言自体の真実性を抗弁として認めていない。政府が本報告書期間中にこれらの法律を乱用し、公的議論を制限した証拠はない。

    インターネットの自由

    政府はインターネットへのアクセス制限や介入、またはオンライン上のコンテンツの検閲をしなかった。また政府が適切な法的権限なく、個人的なオンライン通信を監視したとの信じるに足る報告もなかった。インターネットは広く利用可能であり、かつ利用された。

    学問の自由と文化的行事

    3月、文部科学省は、自由民主党の国会議員の要請で、名古屋市教育委員会に対して、ある中学校の授業で2月に行われた講演の内容と背景について質問状を送付した。講演者であった前文部科学事務次官は、文部科学省の介入について、極めてまれであり教育基本法が禁ずる教育への不当な支配に当たる可能性が高いと述べた。文部科学省はこの主張を否定し、問い合わせは地方教育行政に関する別の法律の下で行われ、教育への不当な支配には当たらないと述べた。

    文部科学省による歴史教科書検定は、特に日本の20世紀の植民地支配および軍事に関する歴史の扱いについて、論争になった。

  2. 平和的な集会および結社の自由

    法律により集会と結社の自由が規定されており、日本政府は、全般的にこれらの権利を尊重した。

  3. 信仰の自由

    国務省の「信仰の自由に関する国際報告書」を参照。

  4. 移動の自由

    法律により、国内の移動、外国旅行、移住、本国帰還の自由が規定されており、日本政府は、全般的にこれらの権利を尊重した。日本政府は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)およびその他の人道支援組織と協力して、国内避難民、難民、庇護申請者、無国籍者、およびその他の関係者に保護と援助を行った。

    国内避難民 (IDPs)

    2011年の地震、津波および福島第一原子力発電所の事故の後、政府は全般的に、避難所およびその他の保護サービスを十分に提供するとともに、移住または再建の選択肢を提供しようと努めた。

    難民の保護

    庇護へのアクセス

    法律は、庇護の付与あるいは難民の認定を規定しており、日本政府は難民を保護する制度を確立している。法務省は、真の申請者への難民認定の速やかな促進、かつ申請手続きの不正利用を抑止するため、難民審査手続きの見直しを行い、1月15日から導入した。その結果、以前却下されたが認定された2件の申請を含む、1月から6月までの認定数は、2017年全体の認定数を上回った。2017年の申請者数は1万9629人で、そのうち20人(0.1%)が認定を受けた。2018年1月から6月まで、政府は5586人の申請を受理、そのうち22人(0.4%)を認定した。

    未成年あるいは障害のある難民認定および庇護申請者は、難民審査参与員制度の下での第1回目の審問への参加を弁護士に依頼することができる。UNHCRは、2018年にそのような事例はなかったと報告した。法的支援を求める多くの難民および庇護希望者は、政府の援助による法的支援を受けることができなかったので、日本弁護士連合会が、支援を受けることができない申請者に対して無償で法律支援を行うプログラムに、引き続き資金を提供した。

    法務省、日本弁護士連合会、およびNGO「なんみんフォーラム」は、成田空港、羽田空港、中部空港、および関西空港に到着し、仮上陸または仮滞在の許可を得た難民認定申請者に対し、住居、社会福祉および法的サービスを提供する収容代替措置(ATD)事業を引き続き協力して実施した。ATDは、日本政府が助成する市民組織の資金および寄付金で賄われている。

    政府は10月4日、アジア初の定住受け入れ国として2010年から続けているビルマ人対象の第三国定住プログラムに基づき、5家族22人のビルマ人を受け入れた。

    移動の自由

    市民社会団体は、庇護希望者を無期限に収容することが、依然として問題であると述べた。UNHCRは、難民認定申請者の適正手続きのない収容や子どもの収容は行われるべきではないと述べた。

    雇用

    難民認定申請者は、有効な短期滞在ビザを所持しない限り、通常就業が認められていない。収入を得る活動に従事するには、ビザの有効期限内に許可を申請しなければならない(資格外活動許可)。許可を得るまでの間、経済的に困難な状況にある一部の申請者に対し、政府が出資するアジア福祉教育財団の一部門である難民事業本部が、少額の給付金を支給した。

    基本的なサービスへのアクセス

    難民は依然として、時として他の外国人が経験するものと同様の、住居、教育、雇用の機会を制限される差別を受けた。就業する権利を得る条件を満たす人を除き、難民申請が未決、または異議申し立て手続き中の人は、社会福祉を受ける権利がなく、こうした状況下では、過密状態の政府のシェルターや、違法な就労、またはNGOの援助に頼るしかなかった。

    2017年、政府はUNHCRと連携し、今後5年間でシリア難民100人を日本の大学院に受け入れる奨学金制度を設立した。政府は、日本国内外での就職や進学が可能となるまで、シリア人学生の保護を保証した。近親者は学生に同行することができ、授業料および生活費は、国際協力機構が負担する。

    一時的な保護

    政府は2017年、難民と認定されない可能性のある45人を一時的に保護した。難民審査手続き改定後の1月から6月まで、21人がこうした保護を受けた。


第3部 政治プロセスに参加する自由

法律により、日本国民には、平等な普通選挙権に基づき、無記名で実施される、自由かつ公正な選挙により政府を選ぶ力が与えられている。

選挙と政治参加

最近の選挙

日本政府が2017年10月に実施した衆議院の解散総選挙は、自由かつ公正であった。自由民主党は、得票率が小選挙区で47.8%、比例代表で33.2%を得て、衆議院で465議席中283議席を獲得し、安倍首相が首班となった。

女性およびマイノリティーの参画

女性およびマイノリティーの政治過程への参画を制限する法律はない。女性の投票率は男性と同等か、もしくは高い状況にあった。総務省のデータによると、1960年代後半以降に行われた国政選挙において、女性は投票者の絶対多数を占める。しかし、女性はどのレベルにおいても、この傾向を反映した比率、あるいは他の先進民主主義国と同等の比率では選出されていない。

政府は5月、選挙政治への女性参画を推進する法律を施行した。法律は各政党に対して、国政および地方選挙の候補者名簿において、男性と女性の候補者数を同等にするよう最大限の努力を求めている。2017年10月の衆議院議員選挙後、衆議院では465議席中47議席、参議院では242議席中50議席を女性議員が占めた。10月の内閣改造後には、20人の閣僚のうち女性は1人だった。しかし、与党・自由民主党の党四役に女性はいなかった。2018年末時点で、47の都道府県のうち、女性知事は3人であった。

民族に基づくマイノリティー・グループの中には混合民族の血を引く人や、マイノリティーであることを自ら明らかにしない人もいるため、民族に基づくマイノリティーの中で国会議員となった人の数を把握するのは難しかったが、選出された議員はいた。

第4部 政府の汚職と透明性の欠如

法律により、公務員による汚職には刑事罰が規定されており、日本政府は全般的に法律を効果的に執行した。文書に記録された公務員の汚職事例があった。

独立した立場の学識経験者は、政・官・財のつながりは密接であり、汚職は依然として懸念される問題だと述べた。NGOは、退職した政府の幹部職員が、政府との契約に頼る民間企業で高報酬の職を得る慣行があることを引き続き批判した。公務員が関与した財務会計に関する不祥事が捜査された。

警察庁および国税庁を含む、複数の政府機関が汚職対策に従事していた。他にも、公正取引委員会が、談合のような不当な取引制限および不公正な商慣行を防止するため、私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)を執行する。犯罪収益移転防止対策室は、マネーロンダリングおよびテロリストへの資金供与の防止に責任を負う。国家公務員倫理審査会は、倫理規定違反の疑いのある公務員を取り締まる。会計検査院は、政府が主要株主である企業の会計を監査する。汚職対策に従事する機関は全般的に十分な資金を得て独立して効果的に活動を行ったが、一部に要員の不足があった。

汚職

報道機関は2018年、賄賂や不正などの汚職事例で複数の有罪判決を報告した。大分地方裁判所は12月18日、公共事業の発注で民間企業に便宜を図った見返りに賄賂を受け取った元大分県職員に有罪判決を言い渡した。

資産公開

法律により、国会議員には、所得、および不動産、有価証券ならびに輸送機の所有状況を含む資産(ただし普通預金を除く)の公開が義務付けられている。法律により、県知事、県議会議員、市長および主要20都市の市議会議員には、地方の条例に基づいて所得および資産の公開が義務付けられているが、残る約1720の市区町村の議会議員に対しては、同様のことは義務付けられていない。虚偽の公開をした場合の罰則はない。同法は、選挙で選ばれていない公務員には適用されない。これとは別に、閣議決定された規範は、閣僚、副大臣、および大臣政務官に対して、本人、配偶者および扶養する子の資産を公開するよう規定している。

第5部 人権侵害の疑いに対する国際機関および非政府機関の調査に対する政府の姿勢

国内外の多くの人権団体は、全般的に、政府による制約を受けずに活動し、人権侵害の事例について調査し、調査結果を公表した。政府関係者は、通常協力的であり、こうした団体の見解に対応した。

政府の人権機関

法務省の人権相談所が全国311カ所に設置されていた。約1万4000人のボランティアが、直接面談して、あるいは電話やインターネットを通じて質問に答え、秘密厳守で相談に応じた。50カ所の相談所では、6カ国語での相談が可能であった。こうした相談所は、問い合わせに対応したが、個人や公的機関による人権侵害を調査する、助言を与える、あるいは仲裁する権限がない。地方自治体には、さまざまな人権問題を扱う人権担当部署が設置されていた。

第6部 差別、社会的虐待、人身取引

女性

強姦および配偶者からの暴力

法律により、被害者の性別を問わず、さまざまな形態の強姦が犯罪とされている。また、18歳未満の未成年者に対する監護者による強姦も犯罪とされている。法律は、配偶者間の強姦を否定しないが、婚姻が破綻している状況にある場合(正式な離婚または別居など)を除いて、そのような判決を下した裁判所はこれまでにない。法律は、5年以上の懲役を義務付けている。裁判所はこれまで、性交を強姦と判断するには、被害者による物理的抵抗が不可欠であると法律を解釈してきた。配偶者からの暴力も犯罪にあたり、被害者は裁判所による保護命令を申し立てることができる。暴行加害者は有罪になると、2年以下の懲役、もしくは30万円(2600ドル)以下の罰金が科せられる。人の身体に傷害を加えた者は、有罪となった場合、15年以下の懲役、もしくは50万円(4400ドル)以下の罰金が科せられた。保護命令に違反した者は、1年以下の懲役、もしくは100万円(8800ドル)以下の罰金が科せられた。

NGOと法律の専門家は、性犯罪とその被害者に関する研修が裁判官、検察官、弁護士に不足していると指摘した。

強姦および配偶者からの暴力は、届け出がかなり少ない犯罪とされているが、入手可能な直近のデータはない。この分野の専門家は、女性が強姦の届け出に消極的なのは、被害者支援の不備、警察の対応の際の二次被害の可能性、強姦被害者に対する理解を欠く裁判手続きなどさまざまな要因にあるとした。

生活の本拠を共にする交際相手、配偶者、元配偶者からの暴力の被害者は、シェルターにおいて保護を受けることが可能であった。

セクシュアルハラスメント

法律ではセクシュアルハラスメントを犯罪と規定していないが、セクシュアルハラスメント防止を怠った企業を特定する措置が規定されている。都道府県労働局および厚生労働省はこれらの企業に対し、助言、指導、勧告を与えた。政府の指針を順守しない企業名は公表できる。しかし、政府は、民間の医療機関が妊娠を理由に女性職員を解雇した2015年以降、セクシュアルハラスメントがあった企業名を公表していない。職場におけるセクシュアルハラスメントは依然としてあった。この分野では初めての調査で、厚生労働省は2016年、常勤および非常勤の女性従業員のうち30%が職場でセクシュアルハラスメントを経験したことがあると報告した。常勤従業員のセクシュアルハラスメント経験者は35%であった。財務省のキャリア官僚が、ある女性記者にセクシュアルハラスメントを行ったという申し立てと、この事案に対する財務省の初動対応が適切になされなかったとする国民の批判を受け、4月に辞任した。その後政府は、国家公務員の全幹部職員への研修の義務化や、各省庁内に一般国民がセクシュアルハラスメントを報告できる相談窓口の設置など、セクシュアルハラスメント防止に向けた一連の対策を発表した。(第7部d.を参照)

人口抑制の強制

強制中絶や不本意な避妊手術に関する報告はなかった。

1月から10月まで、1948年から1996年に旧優生保護法の障害者を対象とした政策の下で不本意な避妊手術を受けた7人の男女が、国を相手に損害賠償を求めた。厚生労働省は、旧優生保護法下で約2万5000人が避妊手術を受けたと推定した。

差別

法律により性差別は禁止され、全般的に女性には男性と同じ権利が与えられている。内閣府の男女共同参画局は引き続き、政策を検討し、その進捗状況を監視した。

このような政策にもかかわらず、NGOは引き続き、性差別撤廃措置の実施が不十分であるとし、法律における差別的な条項、労働市場での女性に対する不平等な扱い(第7部d.を参照)、選挙で選ばれた高位の議員の中に女性が少ないことを指摘した。東京医科大学は8月、女子学生数を制限し男性医師を増やすため、10年以上にわたり入学試験の点数を故意に改ざんしていたことを認めた。これを受け文部科学省は、医学部医学科がある全国81大学に対して、女子学生を制限するため入試結果を改ざんしたことがあるか調査した。文部科学省は、10校が女子学生を制限するため入試結果を改ざんしたと結論付け、当該大学に対して、不適切な行為を是正するよう指導した。

NGOは政府に、選択的夫婦別姓制度の採用を引き続き要請した。

子ども

出生届

法律では、子どもの父親が日本人でその子の母親と結婚しているか、子どもを認知している場合、子どもの母親が日本人である場合、または子どもが日本で生まれ、その両親が不明あるいは無国籍の場合に、生まれた子どもに日本国籍を認めている。法律により、国内で生まれた子の場合は14日以内に、国外で生まれた子の場合は3カ月以内にそれぞれ出生届を出すことが義務付けられており、この期限はおおむね順守された。提出期限を過ぎた出生届も受理されたが、罰金が科せられた。

法律により、出生届に子が嫡出子か非嫡出子かを明記することが義務付けられているが、現在法律は、嫡出子と同等の相続権を非嫡出子に認めている。法律は、離婚成立から300日以内に生まれた子は離婚した男性の子であると推定しており、そのため、正確な人数は不明だが、子どもの出生届が出されず無戸籍となる状況が発生している。

子どもに対する虐待

厚生労働省によると、国民の意識が高まったことから、児童虐待の報告件数は増加した。教師による子どもに対する性的虐待が報告された。児童支援の専門家は、学校での児童の被害を防止するため、児童に対する性的虐待に関与した教師についての情報を文部科学省が積極的に警察と共有する必要性を主張した。法律は児童虐待が疑われる家庭の臨検手続きを簡素化し、児童相談所に法律、心理学、医療の専門家を配置することを義務付け、より多くの自治体に児童相談所の設置を認め、公共の施設への入所対象年齢を引き上げた。

早婚および強制婚

法律は、婚姻適齢について、男性は18歳以上、女性は16歳以上と規定している。20歳未満の者は、少なくとも両親のいずれかの同意がなければ結婚できない。民法の一部を改正する法律は、男女の婚姻年齢を18歳とすることにより、男女間の婚姻開始年齢を統一するもので、2018年6月に公布されており、2022年に施行される。

子どもの性的搾取

児童買春は違法であり、懲役もしくは罰金を含む罰則に処せられる。法定強姦に関する法律は、同意の有無にかかわらず13歳未満の少女との性交を犯罪としている。法定強姦をした者は3年以上の懲役に処せられ、法律は執行された。加えて、法律や条例は、未成年者の性的虐待について包括的に対処している。児童ポルノの単純所持は犯罪である。児童ポルノの商用化は違法であり、3年以下の懲役もしくは300万円(2万6400ドル)以下の罰金に処せられる。警察はこの犯罪の厳重な取り締まりを続けた。

引き続き行われている「援助交際」や、出会い系、ソーシャル・ネットワーキング、「デリバリー・ヘルス」などのウェブサイトの存在が、性的搾取を目的とする児童の人身取引、およびその他の商業的性産業を助長した。成年男性と未成年の少女を結びつけるデートサービスやポルノ強要などの性的搾取を目的とする児童の人身取引「JK(女子高生)ビジネス」を取り締まる関係府省対策会議は、引き続き取り締まりを強化した。取り締まりの成果として警察は、2017年4月から12月までに42人の「JKビジネス」経営者や顧客を逮捕し、未成年の被害者25人を救出した。

「JKビジネス」で働く少女を支援するNGOは、これらの事業と買春による子どもの商業的性的搾取の関連性を報告した。

日本は、児童ポルノの製造および人身取引犯による子どもの搾取の現場であった。

警察は1月、営利目的で女性と少女をそそのかして性交させたとして、芸能事務所社長とポルノビデオ製造会社の経営者を逮捕し摘発した。この法律の適用は80年間以上で初となったにもかかわらず、検察庁は被疑者を起訴しなかった。性描写が露骨なアニメ、マンガ、ゲームには暴力的な性的虐待や子どもの強姦を描写するものもあるが、日本の法律は、こうしたアニメ、マンガ、ゲームを自由に入手できるという問題に対処していない。

国務省の「人身取引報告書」を参照。

国際的な子の奪取

日本は、1980年に採択された「国際的な子の奪取の民事面に関する条約(ハーグ条約)」の締約国である。国務省の「ハーグ条約の順守状況に関する国務省の年次報告書」を参照。

反ユダヤ主義

日本に居住するユダヤ人の公式な人口統計は入手できなかった。ユダヤ人コミュニティーの代表によると、コミュニティーを実際に構成しているのは約100世帯である。代表によると反ユダヤスピーチなど少数の個人による抗議活動がまれにあった。

人身取引

国務省の「人身取引報告書」を参照。

障害者

障害者基本法により、身体障害者、知的障害者、精神障害者、あるいはその他の心身に影響を及ぼす障害のある人たちに対する差別は禁止されており、公共および民間部門における障害を理由とする権利および利益の侵害は禁止されている。同法は、雇用、教育、医療およびその他のサービスの提供に関し、公共部門には合理的配慮の提供を義務付け、民間部門には努力義務を規定している。法律は、差別を経験した障害者の救済を規定しておらず、また違反した場合の罰則を設けていない。別の法律は、政府および民間企業に対し、障害者(精神障害者を含む)を一定の比率(2%)以上雇用することを義務付けており、違反すると罰金が科せられる。障害者の権利擁護団体は、障害者を雇用するより罰金の支払いを選択する企業もあると主張した(第7部d.を参照)。

政府が8月に公表した調査によると、中央省庁27機関が障害者の雇用率を水増ししていた。また地方自治体も義務付けられている障害者雇用人数を満たしていなかったと発表した。その対応として政府は12月、2019年4月採用となる障害者を対象とした初の国家公務員試験の申込受付を開始した。

公共施設の新たな建設プロジェクトでは、障害者のための設備を整備することがアクセスビリティに関する法律で義務付けられている。政府は、病院、劇場、ホテル、およびその他の公共施設の経営者が、障害者用の設備を改善または設置する場合には、低金利の融資および税制上の優遇措置を認めることができる。

それにもかかわらず、一部の公共サービスについては障害者の利用が制限された。障害者の虐待は深刻な懸念事項であった。家族、障害者福祉施設職員または雇用者からの虐待を経験した障害者は、全国でみられた。民間の調査によると、障害のある女性に対する差別や性的虐待があった。長野地裁松本支部は5月23日、障害者福祉施設アンサンブル会の元従業員が、入所していた知的障害のある女性を施設で性的に虐待したと認定し、男性と施設に慰謝料など330万円(2万9000ドル)の支払いを命じた。

統合教育を提供した学校もあったが、障害のある子どもは一般的に特別支援学校に通学した。

精神衛生の専門家は、精神障害への偏見を軽減し、うつ病やその他の精神疾患は治療可能な、生物学に基づく疾患であることを一般の人々に知らしめる政府の努力が十分になされていないと批判した。

国籍・人種・民族に基づくマイノリティー

マイノリティーは、その程度はさまざまであるが社会的差別を受けた。

法律は部落民(封建時代に社会的に疎外された者の子孫)に対する差別の問題に取り組むことに特化している。この法律は、国および地方公共団体に部落差別について調査し、啓発教育を行い、相談体制を充実させるよう義務付けている。

部落民の権利擁護団体は引き続き、多くの部落民が社会経済的状況の改善を実現したにもかかわらず、雇用、結婚、住居、不動産価値評価の面での差別が横行している状況が続いたと報告した。公式に部落民というレッテルを貼って部落出身者を識別することはもうなかったが、戸籍制度を利用して部落民を識別し、差別的行為を促すことが可能であった。部落民の権利擁護団体は、多くの政府機関も含め、就職希望者の身元調査のため戸籍情報の提出を求めた雇用者が、戸籍情報を使って部落出身の就職希望者を識別・差別することがあるかもしれない、と懸念を表明した。

日本で生まれ、育ち、教育を受けた多くの外国人を含む、日本で永住権を有する外国人と帰化した日本人は、差別に対する法的な保護措置があるにもかかわらず、住居、教育、医療、および雇用の機会の制限など、さまざまな形で根深い社会的差別を受けた。外国人や、「外国人のように見える」日本国民は、ホテルやレストランなど一般の人々にサービスを提供している民間施設への入場を、時には「外国人お断り」と書かれた看板によって禁じられたと報告した。NGOは、こうした差別が通常あからさまで直接的であったにもかかわらず、政府がそのような制限を禁止する法律を執行していないと訴えた。

韓国・朝鮮人コミュニティーの複数の代表は、公共の場とソーシャル・ネットワーキングのウェブサイトで引き続き彼らに対するヘイトスピーチがあったと述べた。加えて、韓国・朝鮮人の社会的受容が向上した兆候はなかった。帰化申請のほとんどは当局により許可されたが、支持団体は、帰化手続きを複雑にする過度の官僚的な障壁や、不透明な許可基準について引き続き抗議した。帰化しないことを選択した韓国・朝鮮人は、公民権および政治的権利の面で困難に直面し、仕事での昇任、住居、教育、その他の給付を得る上で頻繁に差別を受けた。

政府高官は、民族集団への嫌がらせが差別を助長するとして公に拒絶し、国内のあらゆる人の個人の権利を保護することを再確認した。

先住民

アイヌは他の全ての国民と同じ権利を享受するが、2017年の公益社団法人アイヌ協会によるアイヌの人々への調査によると、アイヌの人々は、職場、結婚、学校で差別を受けた事例を報告した。法律はアイヌ文化の保存を重視しているが、国による社会福祉政策および教育助成金、国会および地方議会における特別議席、歴史的不当行為に対する政府からの公式謝罪など、アイヌ団体が要求している条項は含まれていない。政府は全会一致の国会議決で、アイヌを先住民族として認めている。ただし、この認定には法的な影響は全くない。

日本政府は琉球民(沖縄と鹿児島県の一部の住民を指す言葉)を先住民族と認定していないが、彼らの独自の文化と歴史を公式に認め、その伝統を保存し尊重する努力をした。

性的指向および性同一性に基づく暴力行為、差別、その他の虐待

性的指向または性同一性に基づく差別を禁止する法律はない。そのような差別に対する罰則は存在せず、関連する統計も入手できなかった。法律により、トランスジェンダーの人々が法律上の性別を変更することは可能であるが、これは性同一性障害であるとの診断を受けた後にのみ可能である。レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、インターセックス(LGBTI)の人々の権利を擁護する団体から、組織に対する妨害の報告はなかったが、いじめ、嫌がらせ、および暴力行為の報告は何件かあった。LGBTIの人々を取り巻く偏見が、依然として、差別や虐待を自ら報告する妨げになっており、また学校でのいじめや暴力に関する調査では、全般的に、関係者の性的指向や性同一性が考慮されていなかった。

与党自由民主党の杉田水脈国会議員は7月の寄稿記事で、LGBTIの人たちは子供を作らないので「生産性がない」と述べた。記事の出版後、自民党はLGBTIの人々を含む多様性を受け入れる社会の実現を目指すという声明を発表し、杉田議員に指導を行った。障害者団体や著名作家を含む幅広い層から杉田議員と雑誌に対する批判の声が上がり、ほどなく雑誌は休刊となった。

東京都は10月、2020年オリンピック・パラリンピック開催地として、オリンピック憲章の反差別理念を実現するため、「東京都、都民および企業は性同一性や性的指向を理由にした不当な差別をしない」と明記した条例を制定した。NGOのLGBT法連合会は、同条例をLGBTIの人々に対する差別を禁じる初の地方条例であるとして公の場で称賛したが、救済条項がないことを理由に条例の有効性に懸念をも表明した。

HIV・エイズ感染者に対する社会的不名誉

HIV・エイズ感染者に対する差別を禁止する法律はないが、拘束力のない厚生労働省のガイドラインには、事業者にはHIV感染を理由に人を解雇あるいは不採用にしてはならないと明記されている。裁判所は、HIV感染が理由で解雇された個人に損害賠償請求を認めてきた。

HIV・エイズ感染者に対する差別についての懸念、この疾患に伴う不名誉、および解雇の恐れが、多くの人にHIV・エイズの感染を公表させなかった。

第7部 労働者の権利


  1. 結社の自由と団体交渉権

    法律は、民間部門の労働者が事前認可あるいは過度の要件なしに、組合を結成し、自分が選んだ組合に所属する権利を規定し、ストライキおよび団体交渉を行う権利を保護している。

    公共部門の職員および公共企業体の従業員には、法律により、組合を結成し、自分が選んだ組合に所属する権利に制限が課されている。公共部門の職員は、公共部門職員の組合に参加することが許されており、こうした団体が公共部門の雇用者と賃金、労働時間、その他の雇用条件について一括して交渉することができる。公共部門の職員にはストライキをする権利がない。公共部門でストライキを扇動する労働組合の指導者は免職され、罰金または懲役に処せられる場合がある。消防職員および刑事施設職員には団結権と団体交渉権が認められていない。

    発電および送電、運輸および鉄道、通信、医療および公衆衛生、郵便などの必要不可欠なサービスを提供する部門の労働者は、ストライキをする日の10日前までに当局に通知しなければならない。必要不可欠なサービスの提供に関わる従業員には団体交渉権がない。

    法律は組合に対する差別を禁止し、組合活動のために解雇された労働者の職場への復帰を規定している。

    日本政府は結社の自由、団体交渉権、および合法的なストライキについて規定する法律を効果的に執行した。政府の取り締まりと罰則は、全般的に違反の防止に十分であった。違反があった場合には、労働者または労働組合は労働委員会に異議を申し立てることができ、労働委員会は雇用者に救済命令を発することができる。その後、原告はその問題について民事訴訟を起こすことができる。裁判所が救済命令を支持し、救済命令違反を認定した場合、罰金、禁固、またはその両方の罰則に処すことができる。

    政府と雇用者は結社の自由と団体交渉権を全般的に尊重したが、短期雇用契約の増加は、正規雇用を損ない、団体活動を妨げた。団体交渉権は民間部門で一般的であったが、一部の企業は、法律の下での従業者の保護を回避するため、法人格の形態を変更して、法律的には雇用者とみなされない持ち株会社制度に移行した。

  2. 強制労働の禁止

    法律によりあらゆる形態の強制労働は禁止されている。

    外国人労働者が雇用される部門で見られるように、労働市場の一部では、違反が根強く残っており、法の執行が十分ではなかった。しかし全般的には政府は法律を効果的に執行した。強制労働に対する法律上の刑罰は、強制労働の形態、被害者、このような犯罪を訴追する検察官が適用した法律により異なった。全ての形態の強制労働が法律によって明確に定義されているわけではなく、また違反を防止するのに十分な刑罰が科せられているわけでもなかった。例えば、法律は強制労働を犯罪とし10年以下の懲役を規定するが、収監に代わる罰金刑も認めている。NGOは、複数で重複する法令に依拠することが、特に心理的抑圧の側面がある強制労働に関わる人身売買の犯罪について、政府による特定と訴追を阻害していると主張した。

    製造業、建設業および造船業において強制労働の報告が引き続きあった。これは主に、技能実習制度(TITP)を通じて外国人を雇用している中小企業にみられた。TITPは、外国人労働者が日本に入国し、事実上の臨時労働者事業のような形で最長5年間の就業を認める制度であり、この分野の多くの専門家は人身取引およびその他の労働者虐待の温床になりやすいと評価した。

    このような職場で働く労働者は、移動の自由およびTITP関係者以外の人物との連絡の制限、賃金の未払い、長時間労働、母国の仲介業者に対する多額の借金、ならびに身分証明書の取り上げを経験した。例えば、カンボジアと中国から来た女性たちは、岐阜県の縫製工場での勤務における長時間労働、劣悪な生活環境、移動の自由の制限、賃金不払いについて詳述した。労働者は時として「強制貯金」も求められたが、こうした貯金は実習の切り上げ、あるいは強制送還の場合には没収された。例えば、報告によると、技能実習生の中には、仕事を得るため自国で最高100万円(8900ドル)を支払った者もいた。また報告によると、実習を切り上げようとした場合に、このような資金が自国の仲介業者に没収されることが義務付けられていた契約の下で雇用されていた技能実習生もいた。こうした行為はいずれも、TITPの下で違法である。2017年政府は、技能実習生の職場を立入検査する監督機関として外国人技能実習機構(OTIT)を設立した。OTITは人員不足で、日本語を話せない人たちとの接触が不十分であり、強制労働の事案を訴追するには効果的でないという懸念がある。

    日本に不法入国した労働者やビザの期限が切れたまま不法滞在した労働者は、特に弱い立場におかれた。NGOは政府の監督が不十分であると主張した。

    TITPの下での強制労働が蔓延しているにもかかわらず、これまで労働搾取目的の人身取引の事件が訴追されたことは一度もない。

    政府は12月8日、より多くの技能労働者および単純労働者を受け入れるために新たな就労ビザの範疇を設け、外国人労働者を受け入れる企業を監督するために、入国管理局を庁に格上げする法を制定した。NGOは、新法はTITPの下で引き続き起きている強制労働の事案を防止するには十分でないとの懸念を表明した。

    国務省の「人身取引報告書」を参照。

  3. 児童労働の禁止と雇用の最低年齢制限

    15歳から18歳未満の年少者は、重量物の取り扱いや、運転中の機械の掃除、検査または修繕など、危険な、あるいは有害と指定される仕事でなければ、いかなる仕事にも従事することができる。しかし、年少者の深夜業は禁止される。13歳から15歳までの児童は「軽易な労働」であれば従事でき、13歳未満の児童でも芸能界であれば働くことができる。

    政府はこれらの法律を効果的に執行した。児童労働に関する違法行為に対する罰則には罰金と懲役があり、違法行為の防止に十分なものであった。

    子どもは、商業的性的搾取の対象となった(第6部子どもを参照)。

  4. 雇用および職業に関する差別

    法律は雇用および職業に関し、差別を禁止している。法律は雇用および職業に関し、宗教、性的指向および/または性同一性、HIVの感染、あるいは言語に基づく差別を明確に禁止していない。

    法律は、男女平等の同一賃金を義務付けている。しかし国際労働機関は、「同一労働同一賃金」という概念が取り入れられていないため、賃金差別に対する法の保護はあまりにも限定されていると指摘した。6月に改正されたパートタイム労働法、労働契約法および労働者派遣法は、「働き方改革関連法」の一環として成立し、業務内容が同一で、予想される職務内容と配置の変更範囲が同一の場合は、正規および非正規雇用労働者を同等に処遇するよう雇用者に義務付ける規定を含んでいる。男女雇用機会均等法施行規則にはまた、全ての労働者の募集、採用、昇進、職種の変更に関して、差別する意図なく採用されたが、差別的な効果のある(法律で「間接差別」と呼ばれる)方針や行為の禁止が含まれている。これらの規定の執行は全般的に脆弱であった。

    2017年の改正育児・介護休業法により、例えば、従業員に認められた休業を3回に分割して取得することを可能にするなど、介護休業の取得の柔軟性が高まった。改正法はまた、有期契約労働者の育児休業要件も拡大した。改正男女雇用機会均等法は、雇用者に通称「マタハラ」と言われるマタニティハラスメントを防止する措置を講じるよう義務付けた。法律はまた、保育施設に入れない場合には、父親もしくは母親の育児休業期間をさらに6カ月延長し、最長2歳まで育児休暇の取得が可能となった。法律は、国および地方公共団体、ならびに301人以上の従業員を雇用する民間企業に、それぞれの組織における女性の雇用状況の分析と、女性の参画と活躍を推進する行動計画の提出を義務付けている。

    法律は、政府および民間企業に対し、障害者(精神障害者を含む)を法定雇用率以上雇用するよう義務付けている。4月の法改正で、国および地方公共団体は法定雇用率が2.3%から2.5%に、民間企業は2.0%から2.2%に引き上げられた。法改正はまた、民間企業の法定雇用率を2021年4月より前までに、さらに2.3%まで引き上げるよう規定している。法律により、従業員200人以上の企業が障害者を一定の比率以上雇用する義務に従わなかった場合には、法定雇用数に足りない障害者1人当たりの罰金を毎月支払わなければならない。障害者の権利擁護団体は、障害者を雇用するより義務付けられた罰金の支払いを選択する企業もあると主張した。

    男女雇用機会均等法違反があった場合、厚生労働省はその問題について雇用者に報告を求めることができ、また助言、指導、是正勧告を行うことができる。雇用者が厚生労働省の勧告に従わない場合、企業名を一般に公表する場合もある。雇用者が報告を怠る、あるいは虚偽の報告をした場合は、罰金を科すことができる。都道府県の労働局雇用均等室の政府ホットラインは、セクシュアルハラスメントに関する相談に対処し、可能な場合は紛争を調停した。

    政府機関による障害者の雇用が法定雇用率に満たない場合の罰則はない。数多くの省庁といくつかの地方公共団体が8月、2017年度の障害者雇用率を水増ししていたと認めた。厚生労働省が発表したデータによると、障害者の総雇用率は2017年6月現在で、中央省庁が2.5%、都道府県が2.65%だった。しかし、多くの政府機関で数値の水増しが行われていたと疑われた。厚生労働省は9月、この問題を調べるため全政府機関の全国的な調査を始めた。

    女性は依然として、職場での不平等な待遇について懸念を表明した。女性の2017年の平均月給は、男性の約73%にとどまった。

    雇用者が妊娠した女性に辞職を強要する報告が引き続きあったが、この問題に関する最近のデータはない。報道機関は12月、ベトナム人の技能実習生が中絶するか辞職するよう言われた事例を報じた。

    政府は有価証券報告書での女性の登用状況の開示を民間企業に促した。政府はまた、引き続き保育施設を充実させた。

    日本労働組合総連合会は2017年11月、回答者の50%以上が、職場のハラスメントを個人的に経験あるいは目撃したとするハラスメントと暴力に関する調査を発表した。

    厚生労働省は、データが入手可能な最新年である2017年、障害者を虐待した雇用者および監督者数は、2016年度に13.4%減少したと発表した。この減少は障害者虐待の防止を目的に施行した法律の職場での認知が高まったこと、および労働基準監督官の執行努力が要因であった。

  5. 許容される労働条件

    最低賃金は、時給737円から958円(6.50ドルから8.50ドル)まで幅があり、都道府県別に定められている。貧困線は、年間所得122万円(1万900ドル)だった。

    法律により、ほとんどの産業で労働時間は週40時間と規定されており、例外もあるが、一定の期間に認められる時間外労働の時間数は制限されている。1日8時間を超えて働いた場合、1カ月45時間を超えない範囲の時間外労働には、賃金の25%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられている。1カ月45時間から60時間までの時間外労働については、法律は企業に25%以上の割増賃金を支払う努力をすることを義務付けている。1カ月に60時間を超える時間外労働については、少なくとも50%の割増賃金を支払うことを義務付けている。

    6月に成立した働き方改革関連法では、初めて時間外労働に法定上限が設けられ、違反に対する罰金および懲役を含む罰則が含まれた。これらの規定は、大企業に対しては2019年4月、中小企業に対しては2020年4月に施行される。原則として時間外労働は月間最長で45時間、年間最長で360時間が認められる。特別および臨時の事情がある場合でも、年間720時間以内および月間100時間未満(休日出勤を含む)、かつ2カ月を超える期間の平均時間外労働時間は80時間以内(休日出勤を含む)にしなければならない。働き方改革関連法にはまた、高度プロフェッショナル制度(日本版ホワイトカラー・エグゼンプション)を導入する規定が含まれ、年収が約1000万円(8万9400ドル)以上の少数の技能専門職に対して一切の残業代(休日出勤手当や夜勤手当を含む)を支払う義務を除外することになった。

    日本政府は労働安全・衛生基準を定めている。労働者は、自らの雇用を危険にさらすことなく、健康や安全を脅かす状況から離れることができる。

    厚生労働省が、ほとんどの業種の賃金、労働時間および安全・衛生に関する法律・規則の執行について責任を負う。国家公務員の労働安全・衛生については人事院が所掌する。鉱業については経済産業省が、海運業については国土交通省が労働安全・衛生をそれぞれ所掌する。

    最低賃金法は、最低賃金を支払わなかった雇用者に対し、対象となる従業員の数や違反の期間に関係なく罰金を規定している。労働安全衛生法および労働基準法など他の労働法は、法律に従わない雇用者に対し罰則を規定している。法令順守を実施する労働監督官の数は十分ではなかった。東京簡易裁判所は2017年10月、従業員による過度の時間外労働を防止する措置を怠ったとして、ある大手広告代理店に対し50万円(4460ドル)の罰金を科した。この判決は、2015年の若い女性の死亡について、その従業員の1カ月の時間外労働が130時間に及び、1週間の睡眠時間が10時間であったことを示す記録から、東京労働局が過労死と認定した2016年の決定に続くものであった。大手広告代理店に対するこの裁定により、過度な労働が引き起こす深刻な結果にあらためて注目が集まり、時間外労働を制限する法改正につながった。労働組合は、依然として、政府が労働時間制限の執行を怠っていると批判し、政府職員を含め労働者は日常的に、法律で定められた労働時間を超えて働いた。

    日本政府は全般的に、全ての産業において、労働安全・衛生に関する法律・規則を効果的に執行した。労働安全・衛生基準違反に対する罰則には罰金と懲役があり、全般的に違反の防止に十分であった。労働基準監督官は、重大な違反の場合には、安全でない操業を直ちに停止させる権限を有するが、重大でない場合は、拘束力のない指導を与えることができる。厚生労働省の職員は、しばしば、430万カ所以上の事業所を監督するには資源が不十分であると述べた。

    非正規雇用労働者(非常勤、有期契約および派遣労働者を含む)は、2017年の労働力人口の約37%を占めた。これらの労働者は正規雇用労働者より低い賃金で働き、多くの場合、雇用の安定性や福利厚生が劣っていた。一部の非正規雇用労働者には、保険、年金および研修を含むさまざまな福利厚生を受ける資格が与えられていた。この分野の専門家は、4年または5年未満の契約、および労働者が無期労働契約への転換を雇用者に申し込むことが可能になる通算5年に至る直前の契約終了が増加していると報告した。研究者、技術者、大学の教員など大学や研究開発法人に勤務する労働者について、無期労働契約に転換するまでの期間が10年に延長された。

    危険な装置や不十分な研修に起因するけが、賃金や残業手当の未払い、過度の、時として誤った賃金控除、強制送還、および標準以下の生活環境など、TITPにおける悪用事例の報告がよくみられた(第7部b.参照)。さらに、この分野の専門家は、TITPの労働条件を監督する監督官および審査官は、TITPを共管する省のうちの2省が雇用していることから、利益相反も存在したと主張した。監督官や審査官の中には、事業主が支持する政府のプログラムに対して否定的なイメージを与えかねない調査を行うことに難色を示す者もいた。

    また、仮放免許可を受けており、就労許可がない外国人庇護希望者が非公式に雇用されているという複数の報告があった。このような労働者は、不当な扱いを受けやすく、一般的な労働者としての保護や監督を受けることができなかった。

    労働災害による死亡の原因として最も多かったのは、墜落・転落、道路交通事故および重機によるけがであった。また厚生労働省は引き続き、過労死による被害者認定を求める遺族からの申請を受けた。