ミシェル・オバマ大統領夫人来日に伴い発表された、女子教育向上のための日米連携に関するキャロライン・ケネディ駐日米国大使のあいさつ

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

2015年3月19日、東京・外務省飯倉公館

(草稿)

こんにちは。本日、米国と日本が世界の女子教育に関する新たなパートナーシップを発表するにあたり、この場にいられることを大変うれしく思います。

私のあいさつを始める前に、夫に代わり、昨日チュニジアで発生した恐ろしい出来事に対し、謹んで哀悼の意を表したいと思います。日本をはじめとする各国の犠牲者の愛する方々にお悔やみ申し上げます。本日、私たちは彼らを思い、祈りをささげます。

まず、私の友人である安倍昭恵首相夫人の温かいおもてなしに感謝いたします。今日はご一緒できて光栄です。また昭恵夫人が世界中の少女のために 熱心に取り組んでいらっしゃることにもお礼を申し上げます。昭恵夫人は今回のパートナーシップ創設に関する日本の取り組みに深く関与されています。昭恵夫 人と安倍首相のリーダーシップに感謝申し上げます。

齋木尚子・外務省経済局長の素晴らしいごあいさつ、そしてリーダーシップにも感謝します。

そして言うまでもなく、優れた駐日米国大使であり、私の親愛なる友人でもあるキャロライン・ケネディ大使にも感謝いたします。大使は女子教育の 危機に対する私たちの熱意を共有していますから、本日の参加を大変うれしく思います。私は、この「危機」という言葉を軽々しく使っているわけではありませ ん。事実、この問題は危機的な状況にあります。お聞き及びかもしれませんが、現在、世界には学校に通えない少女が6200万人います。

この問題を議論する際には、少女たちが直面する経済的な障壁を重視しがちです。授業料や制服代のこと。最寄りの学校から遠く離れた場所に住んでいて、安全な交通手段がないこと。彼女たちが住む地域の学校に女子用トイレがないため学校に通うことができないことなどです。

しかし、インフラやリソースだけが問題ではないことを私たちは知っています。問題は物事に対する考え方や信念です。問題は、父親、そして母親 が、自分たちの娘が息子と同じように教育を受ける価値があると考えているか否かにあります。問題は、地域社会が家事労働力や生殖能力といった少女たちの体 にのみ価値を見出しているのか、それとも知性という点でも少女たちを尊重しているかであり、社会が女性を抑圧する法や伝統にしがみついているか、それとも 女性を男性と同じ権利や自由を持つに値する完全な市民と見ているかという点にあります。

自分自身に正直になってみると、こうした課題が途上国に限られていないことを認めざるを得ません。

例えば、日米は女子教育において目覚しい進展を遂げてきましたが、どちらの国の女性もいまだに、家庭のニーズと仕事で求められる役割とのバラン スをとるのに苦労しています。女性が仕事で成功することと献身的な母親でいることは両立不可能で、仕事か家庭のいずれかを選ばなければならないという時代 錯誤の考えに悩まされています。

しかし現実には、このような制限を女性の人生に課せば、彼女たちの可能性を抑圧することになり、さらに重要なことには、女性が社会貢献する多くの機会が失われてしまいます。私にとって、これが個人的な問題になるのはこの点です。

私は労働者層の人たちが暮らす地域で育ちました。大学に進学する人もほとんどおらず、多くの人が低賃金で長時間働き、生活費の支払いに困ってい たような場所です。少女のころ、私は頭がよく、社交的で、自分の考えや意見をたくさん持っていました。しかし他の多くの若い女性と同様、私という存在は主 に、自分の生活の中にいる男性との関係性で定義される場合が多かったのです。私は「父の娘」という存在でしたし、兄と同じぐらい賢く、同じように遠くまで ボールを打つことも、早く走ることもできましたが、いつも「兄の妹」という存在でした。

学校に入学すると、私のようなつましい家庭出身の女の子は優秀な成績を収めるはずがないという考えを持つ教師に出会うこともありました。プリン ストン大学のような名門校に入学できるはずがないから、出願すべきでないと言われたこともあります。世界中の多くの少女たちと同様、私のような人間は大き な夢を持ってはいけないという意味のことを言われたのです。身を潜めて静かにし、意見を言わず、他人はそれほど期待していないのだから、その期待に身の丈 をあわせるべき、ということでした。

しかし、私は幸運でした。私を信じ、臆することなく自分の考えを述べ、世の中に自分の意見を聞いてもらうよう応援してくれる両親がいたからで す。だから私は夢を持ち続け、学校で懸命に勉強しました。そしてプリンストン大学に出願し、合格しました。その後、弁護士、市職員となり、病院の幹部職員 を務め、地域奉仕に従事する若者を育成する機関の事務局長になりました。そして何よりも大切なことに、私は母親になりました。私の人生のなかで間違いなく 最も大切な仕事です。

働きながら娘たちを育てることは簡単ではありませんでした。しかし、私にとっては正しい決断でした。私は母親であることで、職業人として成長で きました。というのも毎晩帰宅して娘たちを見ると、自分が何のために働いているかをあらためて確認することができたからです。また職業を持つことで、母親 としても成長できました。なぜなら私自身が夢を追求することで、娘たちに自分の夢を追求する手本を示すことができたからです。このバランスをとることがで きた理由は主に2つあります。

1つは、私を信じてくれた夫と家族、そして女性を雇用し柔軟な職場環境を提供する価値を理解する雇用主の支援があったからです。安倍首相とオバ マ大統領はいずれも、女性か男性かを問わず誰もが優秀な働き手であるだけでなく、素晴らしい配偶者や親になれるような政策の策定に懸命に取り組んでいま す。

私が個人的な目標と職業上の目標を両方達成できた2つ目の理由は、他の多くの女性もそうであるように、教育のおかげです。私が受けた教育はまさに、今までの人生で得た全ての機会の出発点でした。

しかし、私のような少女が1人いるとすれば、世界には同じように賢くて、有能な、成功を夢見ているけれども、学校に行く機会に恵まれない少女た ちが他にたくさんいることを私は知っています。これは人間の可能性を大いに無駄にすることであり、世界にとって大きな損失です。

日本で女性が教育を受けられなかったら何を失うことになるか考えてみてください。もし緒方貞子さんが学校に行けず、この時代の最も偉大な外交官 の1人になることができなかったとしたらどうなっていたか、想像してみてください。国連で彼女が発揮した精神的なリーダーシップを失っていたことを想像し てみてください。

素晴らしいバイオリニストの五嶋みどりさんが、自らの才能を見出す機会を得ることができなかったらどうでしょう。私たちが聴けなかったであろう全ての音楽、この世界が失ったであろう全ての美しいものについて考えてみてください。

向井千秋さんの場合はどうでしょう。向井さんが教育を受けることがなかったら、日本人初の女性宇宙飛行士になることはなく、多くの少女たちが宇宙への憧れを抱くこともなかったでしょう。

私の話や、このような女性たちの話を6200万倍してみてください。女子に教育を受けさせないことが世界にとってどれほどの損失であるか理解できるでしょう。

しかし、女子が教育を受けられるようにすれば、つまり真の意味で彼女たちの可能性に投資すれば、その効果は無限に広がります。教育を受けた女の 子は健康な家庭を築き、高い収入を得ることができます。より多くの少女が教育を受けることで、国全体の経済を活性化できます。ですから女子教育は私たちに できる最高の投資です。彼女たちの将来だけではなく、彼女たちの家族、地域社会そして国の将来に対する投資にもなります。

だからこそ、米国政府は先ごろ、世界の女子教育に関する新たな取り組み「女子に教育を」(Let Girls Learn) を開始しました。このイニシアチブの一環として、米国平和部隊のボランティアは各地の指導者、家族、少女たち自身と連携し、少女たちが学校に入学し、学業 を続けられるよう支援します。指導教育プログラムや女子リーダシップ育成キャンプなど、多くのプログラムをつくります。

しかし昭恵夫人がおっしゃったように、1国だけでこの問題を解決することはできません。私が本日、日本にいるのはそのためです。日本は米国に とって最も緊密で重要な同盟国・開発パートナーの1つです。事実、日本はアジア最大の援助国です。そして今、日本は再び、先頭に立って女子教育に420億 円を投資しようとしています。

日本のこの取り組みは、真の意味で世界各国に対する基準になります。そしてこの日米の新たなパートナーシップにより、私たちは世界各国に行動を呼びかけています。

今後、私たちは世界各国の指導者に対して、女子教育への取り組みを強化していくよう訴えていきます。すでに投資を行っている場合には投資の拡大 を呼びかけ、まだ関与していない場合には参加するよう働きかけていきます。この世界規模の取り組みを日本の友人たちと始めたことは適切なことだと思いま す。女子教育など開発の問題に関しては、ご存知のように、日米は他にない歴史を共有しているからです。

平和部隊は、1961年にジョン・F・ケネディ大統領が創設しました。そしてこれに感銘を受けた日本の若者の団体が、今年50周年を迎える青年 海外協力隊 (JOCV)の設立に尽力したのです。このケネディ大統領のお嬢さんが現在の駐日米国大使であり、そして私たちは、平和部隊とJOCVのボランティアが女 子教育などの問題で連携する覚書を締結します。

昭恵夫人がおっしゃったように、私は日本の後、カンボジアを訪問します。カンボジアは「女子に教育を」イニシアチブの活動を最初に始める国の1 つです。昭恵夫人は先ごろカンボジアを訪問し、若者や教育問題に重点的に取り組んだと伺っています。私たちは、カンボジアで、そして他の多くの国々で、平 和部隊とJOCVのボランティアが取り組んでいる仕事―日米が共有する公正、平等、寛容、機会といった価値観を具体化する取り組みでいかに協力しているか を紹介することができうれしく思います。

今日は、ケネディ大統領がかつて、平和部隊への参加を希望する若者について語ったことを思い出しています。「この若者たちは平和な世界を求める 全ての人の光だ」。この言葉は、特に女子教育に関して、50年前と変わらず今の時代にも当てはまります。実業家、政治家、専門職に就いている人など、途上 国の多くの女性リーダーたちが歩んできた道は、彼女たちの教育に投資してくれた平和部隊やJOCVボランティアから始まっています。

その好例が、マラウイ出身のアナスタシア・ムソサさんです。アナスタシアさんが子どものころ、平和部隊のボランティアがマラウイの学校に教えに来ました。彼女はボランティアたちの優しさや心の広さに深い感銘を受けました。ボランティアたちの励ましに後押しされ、アナスタシアさんは女性の先駆けとして法律のキャリアを積み、最終的にはマラウイで女性初の最高裁判所長官になりました。

アナスタシア・ムソサ長官は、ボランティアたちが彼女の人生に与えた影響を振り返り、このように言いました。「今の私があるのはボランティアのおかげだ。平和部隊ボランティアと過ごした時間が、私に夢を持たせてくれた」

これこそ安倍首相と昭恵夫人が語る「女性が輝く社会」の構築ではないでしょうか。お二人が語っているのは、女性の力、素質、創造力を輝かせ、女性や少女が夢を追求できる社会をつくるということではないでしょうか。

そしてそれこそ、この取り組みが目指しているものです。女性が輝く世界―あらゆる家庭、地域社会、国が、性別を問わず全ての国民の貢献から恩恵 を受けることができる世界―を創出することです。この取り組みにあたり、昭恵夫人と安倍首相、そしてお二人が働くこの素晴らしい国ほどふさわしいパート ナーはいません。

安倍首相ご夫妻をはじめ、ここにいらっしゃる全ての皆さまにお礼を申し上げるとともに、世界各地でこのビジョンの実現のため日々尽力している平和部隊およびJOCVボランティアに感謝の意を表します。

世界中の少女にふさわしい教育を提供するため、皆さんと今後も協力していきたいと思っています。

ありがとうございます。