信仰の自由に関する国際報告書(2018年版)-日本に関する部分

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

米国国務省民主主義・人権・労働局
2019年6月21日発表

エグゼクティブ・サマリー

日本国憲法は、信仰(信教)の自由を規定し、宗教団体がいかなる政治上の権力であろうともこれを行使すること、あるいは国からの特権を受けることを禁止している。法務省は、同省の人権機関が2017年(入手可能な最新の統計)に受理した信仰の自由の侵害の可能性がある案件についての相談は214件だったと報告した。2016年は274件だった。カトリック教会の司教などは、2019年の新天皇即位の関連行事には宗教的儀式が含まれるとして、政府の公費支出を問題視した。政府は、公費支出は憲法の定める政教分離に違反しないと述べた。10月、高等裁判所は、2013年の首相の靖国神社参拝は、原告の信仰を干渉するものではなく、憲法の定める信教の自由を侵害しないとして、一審の判決を支持した。政府は、法輪功学習者、ビルマのイスラム教徒ロヒンギャ族、中国のウイグル族イスラム教徒など、母国で迫害を受けていると申し立てた一部の宗教信者に、引き続き保護の地位を付与した。三重県伊勢市当局は、イスラム教徒訪問客のための礼拝場所の改修計画を、重要な神宮に近過ぎると地元から苦情を受けたとして、白紙撤回すると発表した。

報道によると、日本の官民の施設は引き続き、イスラム教徒のためのハラル食品の入手と礼拝室利用の機会を拡大した。

米国大使館は、信仰の自由と多様性の受容を促すため、政府、宗教団体、少数派宗教団体の指導者およびその支持者に関与した。

第1節 宗教統計

米国政府は、日本の総人口を1億2620万人と推計している(2018年7月の推計)。文化庁の報告によると、各宗教団体の信者数は、2016年12月31日時点で合計1億8200万人であった。この数字は日本の総人口よりも大幅に多く、日本国民の多くが複数の宗教を信仰していることを反映している。例えば、仏教徒が神道など他の宗教の宗教的儀式や行事に参加するのは一般的なことであり、逆もまた同様である。文化庁によると、信者の定義および信者数の算出方法は宗教団体ごとに異なる。宗教的帰属で見ると、神道の信者数が8600万人、仏教が8500万人、キリスト教が190万人、その他の宗教団体の信者770万人が含まれる。「その他」の宗教および未登録の宗教団体には、イスラム教、バハーイー教、ヒンズー教、およびユダヤ教が含まれる。先住民のアイヌは、主に精霊信仰を実践し、本州北部および北海道に集中しており、少数が東京に居住する。外国人労働者と緊密に接触する非政府組織(NGO)によると、ほとんどの移住者や外国人労働者は、仏教または神道以外の宗教を実践している。ある学者の推計によると、日本にいる日本人以外のイスラム教徒の数は10万人、日本人イスラム教徒は1万人であった。ロヒンギャ族の代表者によると、イスラム教徒ロヒンギャ族の人口は約300人で、ほとんどが東京都の北に位置する群馬県に集中している。日本ウイグル協会は、日本にいるおよそ3000人のウイグル族イスラム教徒のほとんどが、東京あるいは東京近郊の千葉、埼玉、神奈川県に居住していると述べた。日本ユダヤ教団によると、日本ユダヤ教団に加入しているユダヤ教徒世帯数は100~110世帯だが、ユダヤ教徒の総数は不明である。

第2節 政府による信仰の自由の尊重の現状

法的枠組み

日本国憲法は、信教の自由を保障し、国は宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならないと義務付けている。憲法は、宗教団体がいかなる政治上の権力を行使することも、国からの特権を受けることも禁止している。また国民は、憲法が保障する国民の権利を濫用してはならず、これらの国民の権利を公共の福祉のために利用する責任を負うと定めている。

政府は、宗教団体の登録または認証申請を義務付けてはいないが、法人格の認証を受けた宗教団体は、団体の運営維持費の一部に利用される寄付金および喜捨金にかかる所得税を納める必要がない。政府は、法人格を申請する宗教団体に対し、当該団体が物理的な礼拝施設を備えており、教義を広め、宗教的儀式行事を行い、信者を教化育成することが主たる目的であると証明することを義務付けている。申請者は、宗教団体としての3年間の活動記録、信者と宗教教師の一覧表、宗教団体の規則、財産管理についての意思決定方法に関する情報、過去3年間の収支計算書、財産目録を、書面により提出することが義務付けられている。法により、法人格を申請する宗教団体の所轄庁は都道府県の知事であり、登録は都道府県庁に対して行わなければならない、と規定されている。例外として、複数の都道府県に事務所を持つ団体は文部科学大臣に対して登録を行う。申請者が宗教団体としての法的定義を満たしていると文部科学大臣あるいは都道府県知事が確認した後、申請者はその目的、主要人員、財務状況に関する管理規則を作成することを、法で義務付けられている。文部科学大臣または知事が法人格の申請を認可し登録すると、申請者は宗教法人となる。

法により、認証された宗教法人には資産、収入、支出を政府に開示することが義務付けらている。法はまた、営利活動に関する規定に違反している疑いがある場合に調査を行う権限を政府に与えている。宗教法人がこうした規定に違反した場合、当局は、当該法人の営利活動を最長1年間停止する権限を持つ。法により、刑事収容施設において被収容者が1人あるいは集団で行う礼拝および宗教的儀式は、禁止されてはならないと規定されている。

法により、国および地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育やその他宗教的活動をしてはならないと規定されている。また、宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養および宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならないと定められている。公立および私立学校は、文部科学省の基準に沿って教育課程を編成しなければならない。こうした基準は、中学生および高校生に対して一般的な宗教教育を行う場合、学校は慎重に配慮すべきと定める法に基づいている。

労働組合法は、何人も宗教によって労働組合員の資格を奪われないと定めている。

日本は、市民的および政治的権利に関する国際規約の締約国である。

政府による実践

法務省人権擁護局は、引き続き外国語人権相談ダイヤルを、英語、中国語、韓国語、タガログ語、ポルトガル語、ベトナム語の6カ国の外国語で運用した。5月、法務省は、同省の人権機関が2017年(入手可能な最新の統計)に受理した信仰の自由の侵害の可能性がある案件についての相談が214件であったと報告した。2016年は274件であった。人権侵害が疑われる2万675件中、14件(2016年は32件)は信仰の自由が侵害された可能性が高いと確認し、14件(2016年は11件)全てについて、当事者間の仲裁を行う、人権侵害者に素行を改めるよう要求する、あるいは人権侵害の申立人が法的助言を得られるよう所管当局へ紹介するなど、潜在的被害者に対する支援を行なった。しかし、法務省によるこれらの措置には法的拘束力はなかった。

2月、国内のカトリック教会の司教は、政府が「日本国憲法に沿って政教分離の原則に厳格に従うよう」要請し、2019年の天皇退位と新天皇即位に関連する儀式において、国事行為と皇室の私的宗教行事を明確に区別するよう求めた。12月10日、キリスト教徒や仏教徒など241人の原告団は、天皇即位に関わる儀式への公費支出の差し止めを求め東京地方裁判所に提訴した。原告人たちは、政府による支出は憲法の定める政教分離に違反し、神道以外の宗教信者に心理的圧迫を与えると述べた。政府は、儀式は憲法の定める国民主権や政教分離に反するものではないと述べた。

4月13日、沖縄県那覇地方裁判所は、孔子廟設置のために那覇市が市有地を無償で貸与したのは、憲法の定める政教分離に違反しているとの判決を下した。これに対し那覇市議会は4月27日、那覇市長の控訴する意思を支持する決議案を可決した。10月、那覇市長は再選された。

10月25日、東京高等裁判所は、2013年の安倍晋三首相による靖国神社参拝は、原告の信仰に干渉するものではなく、憲法が定める原告の信教の自由を侵害しないとして、一審の判決を支持した。靖国神社では日本の戦没者を祀っている。同神社には戦犯も合祀されている。

文化庁によると、2017年末時点で、国および都道府県は約18万1000団体を法人格を持つ宗教団体として認証した。その数の多さには、宗教団体の地方組織が個別に登録していることが反映されていた。数多くの宗教と団体で構成される宗教間NGOの日本宗教連盟によると、政府は、要件を満たした宗教団体に対して法人格を認定した。

法務省によると、2017年に刑事収容施設は、被収容者に対し、民間ボランティアの教誨師による礼拝や教誨などの宗教的儀式活動を実施し、その回数は集団に対して122回、個人に対して6444回だった。教誨師を育成する公益財団法人・全国教誨師連盟によると、受刑者が面会可能な神道、仏教、キリスト教、その他の宗教のボランティア教誨師は2018年1月時点で推計1846人だった。3月、独立した刑事施設視察委員会は、イスラム教のボランティア教誨師を加え、宗教的教誨の機会を増やし、被収容者の宗教的食事制限と十分相容れる食事を提供するよう提言した。刑事収容施設は、イスラム教の教誨師の志願者はなく、施設は宗教的教誨の機会と宗教に適合した食事を最大限に提供していると回答した。

法務省の報道発表によると、同省は、国連の難民の地位に関する条約および議定書に基づき、宗教を理由に迫害のおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有した少なくとも2人の申請者を難民として認定した。2017年には20人の申請者が難民と認定された。

政府は、法輪功学習者と自認する中国人に、日本国内にとどまることを認める地位を引き続き付与すると同時に、法輪功信奉者が多数を占める海外の芸術家が公演のために入国することを許可した。

政府は、ビルマでの民族的・宗教的迫害を根拠に来日した約300人のイスラム教徒ロヒンギャ族のほとんどに、人道的な理由による特別在留許可、または一時的な滞在ビザを引き続き発給した。これらイスラム教徒の大半は日本に5年超居住しており、中には15年超居住している者もいた。ロヒンギャ族の代表によると、日本に滞在する約300人のイスラム教徒ロヒンギャ族のうち、政府は、最近では2015年に18人に対して難民認定を行なった。同代表はまた、別の約18人の不法滞在状態のロヒンギャ族は、いずれの公式な再定住プログラムにも参加しておらず、就労を禁じられていると述べた。日本で生まれた彼らの子供たちは依然として無国籍だった。日本に滞在する残りのイスラム教徒ロヒンギャ族およそ270人は、人道的な理由で法的に日本での滞在が許可されており就労が認められているが、地方入国管理局でその地位を定期的に更新する必要がある。ビルマ出身のイスラム教徒ロヒンギャ族で国外退去させられた者は過去1年いなかった。

政府は、たいていの場合は留学を当初の目的として来日した、中国出身のウイグル族イスラム教徒約3000人のほとんどに、在留資格あるいは帰化による日本の市民権を付与した。日本ウイグル協会によると、政府が国外退去させたウイグル族イスラム教徒はいなかったが、中国での民族的あるいは宗教的迫害を理由とした10人の難民申請を政府は1人も認めなかった。

3月7日、三重県伊勢市は、地元から苦情を受けたとして、神道の重要な地である伊勢神宮近くの多目的施設の一部をイスラム教徒訪問客のための礼拝場所として改修する計画を白紙撤回すると発表した。報道によると、苦情は、予定されていたイスラム教の礼拝場所が、国の最も重要な神道の宮の1つである伊勢神宮に近いことを主な理由にしていた。

第3節 社会による信仰の自由の尊重の現状

報道によると、増加するイスラム教徒の訪日旅行者への対応および2020年東京オリンピック・パラリンピックで予想されるイスラム教徒訪問客の訪日への備えを主として、公共の場所における礼拝室利用とハラル食品の入手機会が国内で引き続き拡大した。オリンピック開催中の利用を目的としてトラックを利用した移動式モスクが民間市民により7月に開設されたと報じられた。

7月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)は、長崎県の潜伏キリシタン関連遺産を世界文化遺産に登録した。

第4節 米国政府の政策および関与

米国大使館は、外務省との会合において、信仰の自由を促進する国際的な決意の重要性を再確認し、文化庁とのやり取りを通して宗教間の尊重と共存を強調した。日本宗教連盟を始め、イスラム教徒のロヒンギャ族やウイグル族、ユダヤ教および法輪功などの少数派宗教団体指導者、また外国人労働者との会合にて、大使館職員は、米国が信仰の自由の尊重と多様性を優先事項としている点を強調し、国内の全体的な状況を協議した。米国大使館はまた、7月にワシントンで行われた宗教の自由を促進する閣僚会議の開催発表など、信仰の自由の重要性を強調するためにソーシャルメディアのプラットフォームを活用した。