*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。
米国国務省民主主義・人権・労働局
2021年5月12日発表
エグゼクティブ・サマリー
日本国憲法は、信仰(信教)の自由を規定し、宗教団体がいかなる政治上の権力であろうともこれを行使すること、あるいは国からの特権を受けることを禁止している。法輪功のメンバーは公演場所の貸借で苦労しており、これは在京中国大使館の妨害によるものだと引き続き報告した。イリハム・マハムティ日本ウイグル協会名誉会長兼世界ウイグル会議・東アジア・太平洋地域全権代表は、政府の出入国在留管理局で難民認定を申請するウイグル人イスラム教徒が偏見を持たれる可能性や、中国政府職員による威嚇が続いていることを懸念していると報告した。法務省は、同省の人権機関が2019年(入手可能な最新の統計)に受理した信仰の自由の侵害の可能性がある案件についての相談は224件であったと報告した。2018年は164件であった。信教の自由の侵害の可能性が高い7件が確認された。2018年は8件であった。日本の難民認定率は依然として低く、この政策を国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や非政府組織(NGO)は批判した。2019年(入手可能な最新の統計)、政府は、国連の難民の地位に関する条約およびその議定書に基づき、宗教を理由に迫害のおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有した4人の申請者を難民として認定した。2018年は2人であった。
別府ムスリム協会は、同協会が大分県日出町に所有する土地にイスラム教の墓地を建設する計画に対し、一部の住民から反対を受けた。
米国大使館職員は、外務省との面談や国会議員が出席したシンポジウムへの参加を通じて、中国やその他の信仰の自由を制限する国から来たイスラム教徒を保護するため、米国と引き続き協力するよう政府に促した。米国大使館職員は、信仰の自由と多様性の受容を促すため、宗教団体と少数派宗教団体の指導者およびその支持者に関与した。米国大使館は、信仰の自由の重要性を強調するためにソーシャルメディアのプラットフォームを活用した。
第1節 宗教統計
米国政府は、日本の総人口を1億2550万人と推計している(2020年中ごろの推計)。文化庁の報告によると、各宗教団体の信者数は、2019年12月31日時点で合計1億8300万人であった。この数字は日本の総人口よりも大幅に多く、日本国民の多くが複数の宗教を信仰していることを反映している。例えば、仏教徒が神道など他の宗教の宗教的儀式や行事に参加するのは一般的なことであり、逆もまた同様である。文化庁によると、信者の定義および信者数の算出方法は宗教団体ごとに異なる。宗教的帰属で見ると、神道の信者数が8890万人(48.6%)、仏教が8480万人(46.3%)、キリスト教が190万人(1%)、その他の宗教団体の信者740万人(4%)が含まれる。「その他」の宗教および未登録の宗教団体には、イスラム教、バハーイー教、ヒンズー教、およびユダヤ教が含まれる。先住民族のアイヌは、主に精霊信仰を実践し、大多数が本州北部および北海道に居住し、東京には少数が居住する。
外国人労働者と緊密に接触するNGOによると、ほとんどの移住者や外国人労働者は、仏教または神道以外の宗教を実践している。ある学者の推計によると、2018年時点で日本にいる日本人以外のイスラム教徒の数は15万7000人、日本人イスラム教徒は4万3000人で、2013年の前回推計から約6万人増加している。同学者によるとこの増加は、永住権を持つ日本人以外のイスラム教徒が増えたこと、日本人以外のイスラム教徒とイスラム教に改宗した日本人との結婚やその子どもが増えたことによる。在日ビルマロヒンギャ協会のゾーミントゥ会長によると、日本のイスラム教徒ロヒンギャ人の人口は約350人で、ほとんどが東京都の北に位置する群馬県に住んでおり、一部は埼玉県、千葉県、東京都に居住する。イリハム・マハムティ日本ウイグル協会名誉会長兼世界ウイグル会議・東アジア・太平洋地域全権代表は、日本にいる2000人から3000人のウイグル人イスラム教徒のほとんどが、東京あるいは東京近郊の千葉、埼玉、神奈川県に居住していると述べた。日本に長期滞在するユダヤ人によると、ユダヤ教徒の総数は約3000人から4000人である。
第2節 政府による信仰の自由の尊重の現状
法的枠組み
日本国憲法は、信教の自由を保障し、国は宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならないと義務付けている。憲法は、宗教団体がいかなる政治上の権力を行使することも、国からの特権を受けることも禁止している。また国民は、憲法が保障する国民の権利を濫用してはならず、これらの国民の権利を公共の福祉のために利用する責任を負うと定めている。
政府は、宗教団体の登録または認証申請を義務付けてはいないが、法人格の認証を受けた宗教団体は、団体の運営維持費の一部に利用される寄付金および喜捨金にかかる所得税を納める必要がない。政府は、法人格を申請する宗教団体に対し、当該団体が物理的な礼拝施設を備えており、教義を広め、宗教的儀式行事を行い、信者を教化育成することが主たる目的であると証明することを義務付けている。申請者は、宗教団体としての3年間の活動記録、信者と宗教教師の一覧表、宗教団体の規則、財産管理についての意思決定方法に関する情報、過去3年間の収支計算書、財産目録を、書面により提出しなければならない。法により、法人格を申請する宗教団体の所轄庁はそれぞれが所在する都道府県の知事であり、宗教団体は都道府県庁に対して登録を行わなければならない、と規定されている。例外として、複数の都道府県に事務所を持つ団体は文部科学省に対して登録を行う。申請者が法人格の認証を受ける宗教団体としての法的定義を満たしていると文部科学大臣あるいは都道府県知事が確認した後、申請者はその目的、主要人員、財務状況に関する管理規則を作成することが法で義務付けられている。文部科学大臣または知事が法人格の申請を認可し登録すると、申請者は宗教法人となる。
法により、認証された宗教法人には資産、収入、支出を政府に開示することが義務付けられている。法はまた、営利活動に関する規定に違反している疑いがある場合に調査を行う権限を政府に与えている。宗教法人がこうした規定に違反した場合、当局は、当該法人の営利活動を最長1年間停止する権限を持つ。
法により、刑事収容施設において被収容者が1人あるいは集団で行う礼拝および宗教的儀式は、禁止されてはならないと規定されている。法務省は、法律と憲法に定められた信仰の自由の権利を支えるため、受刑者が刑務所内でさまざまな宗教のボランティア教誨師と面会できるようにしている。
法により、国および地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育やその他宗教的活動をしてはならないと規定されている。私立学校は特定の宗教を教えることが許されている。また、宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養および宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならないと定められている。公立および私立学校は、文部科学省の基準に沿って教育課程を編成しなければならない。こうした基準は、中学生および高校生に対して一般的な宗教教育を行う場合、学校は慎重に配慮すべきと定める法に基づいている。
労働組合法は、何人も宗教によって労働組合員の資格を奪われないと定めている。
日本は、市民的および政治的権利に関する国際規約の締約国である。
政府による実践
日本法輪大法学会会長によると、神韻芸術団(法輪功の公演企業)は、引き続き在京中国大使館による脅迫的戦術に直面した。1月に東京都府中市で行われた公演では、中国大使館による公演の妨害を警察が阻止した。日本政府は、法輪功学習者と自認する中国人に、日本国内に留まることを認める地位を引き続き付与すると同時に、法輪功信奉者が多数を占める海外の芸術家が、新型コロナウイルス感染症が流行する前の1月と2月に行われた公演のために入国することを許可した。
日本ウイグル協会の名誉会長によると、政府は日本に住むウイグル人イスラム教徒の保護に対しておおむね意欲を見せた。しかし、政府の出入国在留管理局で難民申請を行うウイグル人イスラム教徒に対して偏見があるのではないかとの懸念を同会長は示した。同氏は、ウイグル人イスラム教徒による難民申請が事務員によって当初却下された事案がいくつかあったが、これは、申請者の民族性によるものではないかと述べた。こうした事案は、政府職員によるさらなる検討が行われ、結果、後に申請が受理されている。
ある全国放送のテレビ局の放映によると、中国の国家安全局員を名乗る男性が、日本ウイグル協会の役員に、中国にいる彼の兄弟を通じて5月に連絡をしてきた。この中国政府職員とされる人物は同役員に対し、他の会員の身元や協会の活動内容を開示するよう要求した。この中国政府職員を名乗る人物は、同役員の協力と引き換えに、中国にいる彼の家族の安全を保証し、同役員の日本国籍の申請に必要な書類を発行すると彼に伝えた。また日本ウイグル協会名誉会長は、中国大使館のパスポート更新の基準は不透明であり、これが、在日ウイグル人イスラム教徒の間で相互不信を招いたと述べた。同名誉会長は、中国大使館が一部のパスポートの更新を拒否した理由を説明しなかったため、申請が認められたウイグル人が中国政府と秘密裏に関係しているのではないかとウイグル人の間で疑いが生じたと述べた。
11月27日、広島高等裁判所は民事訴訟において、一組の夫婦を強制的に改宗させる目的で誘拐・監禁した5人に有罪の判決を下した。2014年、セオコウジさんとセオユウコさんは、世界平和統一家庭連合(統一教会)からの離脱を強要しようとした家族に誘拐され、数日間拘束された。裁判所は有罪となった者に対して、夫に61万円(5900ドル)、妻に111万円(1万800ドル)の損害賠償を支払うよう命じた。
8月、1888年と1965年に学者が調査目的で発掘した6体分のアイヌの遺骨と、同じく発掘された副葬品をラポロアイヌネイションに返還するよう地裁が判決を下した。アイヌ民族を代表する同団体は、発掘により慰霊祭ができなくなり、憲法上の信教の自由が侵害されたとして、先祖の遺骨の返還と50万円(4900ドル)の損害賠償を求める訴訟を起こしていた。
日本宗教連盟は、新型コロナウイルス感染症の発生により経済的な影響を受けた団体を支援する政府の給付金は、法律で認定されたすべての団体を給付対象としており、対象団体には法人格を持つ宗教団体が含まれるにもかかわらず、政府は法人格を持つ宗教団体を対象外にしたと述べた。日本宗教連盟は、政府の決定は不公平であると述べた。政府は、その決定は憲法上の宗教と国家の分離に基づいていると述べた。
日本宗教連盟によると、新型コロナウイルス感染症に由来する宗教団体への寄付金の減少は、一部の宗教団体の存続と宗教活動の継続性に悪影響を及ぼした。これに対して日本宗教連盟は、加盟宗教団体に関連情報を提供する一方で、政府や与党には減税や減免措置、申告期限の延長などを求めた。4月、政府は法人格を持つ宗教団体に対し税の軽減措置を実施した。
法務省人権擁護局は、引き続き外国語人権相談ダイヤルを、英語、中国語、韓国語、タガログ語、ポルトガル語、ベトナム語の6カ国の外国語で運用した。5月、法務省は、同省の人権機関が2019年(入手可能な最新の統計)に受理した信仰の自由の侵害の可能性がある案件についての相談が224件であったと報告した。2018年は164件であった。さまざまな形での人権侵害が疑われる1万6481件中、7件(2018年は8件)は、信仰の自由が侵害された可能性が高いと確認した。同省は、7件全てについて、当事者間の仲裁を行う、人権侵害者に素行を改めるよう要求する、あるいは人権侵害の申立人が法的助言を得られるよう所管当局へ紹介するなど、潜在的被害者に対する支援を行なった。しかし、同省によるこれらの措置には法的拘束力はなかった。
文化庁によると、2019年末時点で、国および都道府県は18万443団体を、法人格を持つ宗教団体として認証した。その数の多さには、宗教団体の地方組織が個別に登録していることが反映されていた。政府は要件を満たした宗教団体に対しておおむね法人格を認定した。
法務省によると、刑事収容施設は2019年、被収容者に対し、民間ボランティアの教誨師による礼拝や教誨などの宗教的儀式活動を実施し、その回数は集団に対して9311回、個人に対して6290回であった。これは入手可能な最新の数字であった。法務省によると、2019年、受刑者が面会可能なボランティア教誨師は推計1625人であった。
NGOとUNHCRは、政府の低い難民申請認定率(2019年は1万375件中44件)について、引き続き懸念を表明した。法務省によると、同省は、国連の難民の地位に関する条約とその議定書に基づき、宗教を理由に迫害のおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有した4人の申請者を、2019年(入手可能な最新の統計)に難民として認定した。2018年の同理由での難民認定数は2名。市民社会や法曹団体は、申請者が自発的に申請を取り下げ、国外退去を受け入れるよう誘導する制限的な審査手続きに懸念を表明し、特に難民申請を審査する際に用いられる「迫害の恐怖」に関する政府の解釈が過度に制限的であると主張した。法務省が公表した1件では、申請者が女性の権利と女子のための教育を推進したため、反政府過激派で信仰を基盤としたグループにより母国で迫害されるという十分に理由のある恐怖を有していると法務省は判断した。過激派グループは、この女性申請者が行っていた女性のエンパワーメント活動が同グル-プの宗教的信条に反すると主張し、彼女を殺害すると脅迫した。法務省は、また、この女性が本国に送還された場合、本国政府は彼女を保護することができないと結論付けた。
政府は、ビルマでの民族的・宗教的迫害を根拠に入国した約350人のイスラム教徒ロヒンギャ人のほとんどに、人道的な理由による特別在留許可、または一時的な滞在ビザを引き続き発給した。これらイスラム教徒の大半は日本に10年超居住しており、中には20年超居住している者もいた。在日ビルマロヒンギャ協会のゾーミントゥ会長によると、日本に滞在する約350人のイスラム教徒ロヒンギャ人のうち、政府は18人に対して難民認定を行なったが、2015年以降、難民認定を受けた者はいない。同会長はまた、別の18人の不法滞在状態のイスラム教徒ロヒンギャ人は、いずれの公式な再定住プログラムにも参加しておらず、就労を禁じられ、医療を受けられないなど困難に直面していると述べた。日本で生まれた彼らの子どもたちは依然として無国籍であった。日本に滞在する残りのイスラム教徒ロヒンギャ人は、人道的な理由で法的に滞在が許可されており就労が認められたが、地方入国管理局でその地位を定期的に更新する必要があった。ビルマ出身のイスラム教徒ロヒンギャ人で国外退去させられた者は過去1年いなかった。
日本ウイグル協会によると、政府は、たいていの場合は留学を当初の目的として来日した約2000人から3000人の中国出身のウイグル人イスラム教徒のうち、約800人に在留資格あるいは帰化による市民権を付与した。政府が国外退去させたウイグル人イスラム教徒は過去1年いなかった。日本ウイグル協会名誉会長によると、政府は年末時点で、中国での民族的あるいは宗教的迫害を理由に2017年に難民申請した10人に対し、1人も難民申請を認めなかったが、ウイグル人イスラム教徒に別の在留資格を引き続き付与した。NGOやUNHCRは、難民認定率が低いと報告した。また、市民社会グループは、申請者が難民として認められるまでに平均3年かかり、複数の申立を伴う場合には10年に及ぶこともあると報告した。
第3節 社会による信仰の自由の尊重の現状
イスラム教徒のコミュニティーは、社会はイスラム教に対する宗教的寛容があると引き続き報告した。ある学者によると、モスクの数は105カ所まで増加した。しかし、いくつかの報道機関は、遺体を埋葬するというイスラム教の伝統が土壌や水を汚染するのではないかという地元住民の懸念から、近隣にイスラム教の墓地ができることに難色を示している地域がいくつかあると報じた。こうした懸念から、2019年に別府ムスリム協会が大分県日出町に所有する土地にイスラム教墓地を建設する許可を得るため地元当局に提出した計画に対し、一部の住民から反対を受けた。報道によると、日出町議会は12月4日、同協会の墓地建設計画に反対する住民約100人の署名を集めた請願書を採択した。日出町が自治体の条令で墓地建設を許可するかどうかは日出町長が最終的な権限を持つと報じられていた。町長は昨年末の時点では決定を下していない。
第4節 米国政府の政策および関与
米国大使館職員は、外務省との面談や国会議員が出席したシンポジウムへの参加を通じて、中国やその他の信仰の自由を制限する国から来たイスラム教徒を保護するため、米国と引き続き協力するよう政府に促した。
米国大使館は、信仰の自由の重要性を強調するためにソーシャルメディアのプラットフォームを引き続き活用した。2019年12月に掲載された記事「ウイグル人迫害を発信する日本の漫画」は、1月に2万1500を超えるページビューを獲得した。これは、同月で次に人気のあった記事の約17倍であった。同記事は他の記事を大きく引き離し、年間を通して高い人気を維持した。
日本宗教連盟を始め、宗教団体指導者やイスラム教徒のロヒンギャ人やウイグル人、ユダヤ教および法輪功などその他少数派宗教団体の指導者、また外国人労働者との対話や会合にて、大使館職員は米国が信仰の自由の尊重を優先事項としている点を強調し、このような団体が直面する問題について議論し、日本政府へ働きかける取り組みについて助言を行った。