2017年人身取引報告書(日本に関する部分)

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

国務省人身取引監視対策部

2017年6月27日

日本(第2階層)

日本政府は、人身取引撲滅のための最低基準を十分に満たしていないが、満たすべく著しく努力している。政府は、前年の報告書対象期間中と比べ、取り組みを強化していることを示した。よって、日本は第2階層に留まることとなった。政府は、技能実習生を搾取から保護するために技能実習制度の監督を強化する法律を2016年11月に成立させ、人身取引犯の訴追および有罪件数を前年比で増加させ、労働搾取目的の人身取引被害者4人を含む、50人を人身取引被害者として認知し、取り組みの強化を示した。しかし、政府は、いくつかの重要な分野においては、最低基準を満たしていなかった。日本が人身取引事案を訴追する上で依拠する法律には、重大な欠缺(けんけつ)があるとみられ、国際法で確認されている全ての人身取引犯罪を捜査、訴追および有罪にする政府の能力の妨げとなっている。さらに、性的搾取を目的とした一部の児童の人身取引被害者は、被害者というよりも非行少年として扱われ、適切な支援を施されず、こうした人身取引犯の犯罪は、捜査も処罰も行われないままであった。技能実習制度における労働搾取を目的とする人身取引犯罪の可能性に関して、非政府組織(NGO)からの報告や申し立てにもかかわらず、政府は、いかなる技能実習生も人身取引被害者として認知せず、また技能実習生の使用に関わったいかなる人身取引犯も人身取引犯として訴追することはなかった。

日本への勧告

国際法の定義に従い、強制労働あるいは性的搾取の人身取引を目的に個人を募集、輸送、引き渡し、収受する者を犯罪者とすることを含め、あらゆる形態の人身取引を全て犯罪とするため、法的枠組みを改定する。人身取引の訴追に適用される罪の刑罰を、最長で4年もの実刑へと引き上げ、罰金刑による代替を認めない。性的搾取目的の人身取引犯罪に対しては、刑罰が、強姦などその他の重罪に科されている刑罰と同等となるようにする。労働搾取目的の人身取引事案の捜査および訴追の取り組みを大幅に強化する。「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習制度改革法)に含まれる監督および執行措置を完全に実施する。強制労働の一因となる、組織や雇用主による過剰な保証金、「刑罰」の合意、パスポートの取り上げ、その他の行為の禁止の実施を強化する。技能実習制度の移住労働者および児童を含むが、これに限定されない人身取引被害者が、適切に認知され、かつ支援を受けられるようにし、人身取引の被害に直接起因する違法行為を犯したことで拘束または強制送還されることがないよう、被害者の審査を強化する。人身取引被害者専用シェルターなど、人身取引の被害者に専門のケアと支援を提供する資源を拡充する。海外で児童買春旅行に参加する日本人の捜査、訴追、有罪判決、処罰を積極的に行う。2000年に採択された国連の国際的な組織犯罪の防止に関する国際条約および同年に採択された人身取引議定書を締結する。

訴追

政府は、人身取引に対する法執行の取り組みを強化した。日本の刑法は、国際法で定義されているあらゆる形態の人身取引を禁止するものではない。政府は人身取引犯罪の訴追にあたり、売春、略取・誘拐、児童福祉および雇用に関する法律のさまざまな規定に依拠している。売春防止法第7条は、脅迫または暴行を加えること、ならびに欺き、困惑させ、もしくは親族関係による影響力を利用して人に売春させることを含む強制売春を犯罪としている。欺いて売春させた場合、最長3年の懲役、もしくは罰金に処される。暴行、あるいは脅迫して売春させた場合、最長3年の懲役、もしくは3年の懲役および罰金にそれぞれ処される。第10条、第12条などその他の関連規定では、人に売春をさせる契約を結ぶこと、あるいは人に売春をさせる事業を営むことを犯罪としており、これらの条項に違反した場合、それぞれ、最長3年の懲役刑または罰金10万円(850ドル)、最長10年の懲役刑および罰金30万円(2560ドル)が科される。児童の性的搾取に関する法律は、「児童買春を目的とする児童の人身取引」を犯罪とし、最長10年の懲役刑を規定している。この法律の要件を満たさない性的搾取を目的とした児童の人身取引事案の訴追には、政府は1947年制定の児童福祉法に依拠する場合が多い。同法は児童に危害を与えることを幅広く犯罪としており、児童に淫行をさせること、第三者が児童に淫行をさせるおそれがあることを知りつつこの第三者に児童を引き渡すこと、あるいは児童に有害な行為をさせる目的でこの児童を自己の下に置くことが含まれる。児童福祉法は、児童に淫行をさせた場合、最長10年の懲役もしくは罰金、またはその両方の刑を、その他の行為については、最長3年の懲役もしくは罰金、またはその両方の刑を規定している。刑法226条の2は、営利あるいはわいせつ目的の人の売買を犯罪とし、最高で最長10年の懲役刑を規定している。また、同項は、国境を越えた男性または女性の移送を目的とした人の売買を犯罪とし、懲役2年から20年の刑罰を規定している。職業安定法は、人が「暴行、脅迫、監禁、その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段」を用いて労働者のあっせん、もしくは募集に従事すること、あるいは「公衆衛生または公衆道徳上有害な業務」に就かせることを目的に労働者を募集することを犯罪としており、最長10年の懲役刑、もしくは300万円以下(2万5630ドル)の罰金刑を規定している。労働基準法第5条は、身体的暴行、脅迫、監禁、その他労働者の精神あるいは身体の自由を不当に拘束する手段を用いた強制労働を禁止している。同法は、暴力を用いた労働力の募集を犯罪としている一方で、詐欺または強制力を用いて人に労働を強いることを明確には犯罪としていない。政府は、強制労働を目的として人を輸送、引き渡し、または収受するといった行為は、刑法第227条第3項により、黙示的に犯罪とされていると述べている。人身取引を犯罪とする日本の法律が、少なくとも4年の懲役刑を規定している限りにおいて、これらの法律は十分に厳格であり、その他の重罪に対する刑罰と同等である。しかし、これらの法律が懲役刑の代わりに罰金を認める限りにおいては、性的搾取を目的とした人身取引犯罪の刑罰は、強姦等のその他の重罪に対する刑罰と同等ではない。複数の市民社会団体は、政府による人身取引事案の認知および訴追を妨げているとして、人身取引に関する包括的な法律の不在を挙げた。

政府の報告によると、2016年の人身取引関連犯罪の捜査件数は44件であり、2015年と同数であった。政府が2016年に起訴した人身取引の被疑者は43人(2015年は26人)であり、本報告書の対象期間中に有罪判決を下した人身取引犯は37人(2015年は27人)だった。有罪判決を受けた37人の人身取引犯のうち、10人は罰金刑のみを受けた。政府は、技能実習生の使用に関与したいかなる人身取引被疑者も、訴追も有罪ともしなかった。しかし、技能実習生の事業場への労働基準監督署による調査の結果、40件の事案を、刑罰がより軽微な労働関連法違反として送検した。政府は、性的搾取の人身取引の一形態である「児童買春」の捜査を809件行ったと報告した。2015年は728件だった。統計を得られる直近の年である2015年に、政府が「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の第4条(児童買春)に基づいて訴追した人数は495人、有罪判決を下した被告人は409人(2015年以前に起訴された被告人を含む)だった。政府は、警察官、検察官、裁判官、入国管理局職員を対象に、人身取引の被害者認知と事案捜査について、多数の人身取引対策研修を引き続き実施した。人身取引犯罪に加担した政府職員に対する捜査、訴追、有罪判決の政府報告は何もなかった。

保護

政府は、人身取引の被害者を保護する取り組みを継続した。政府は、50人の人身取引被害者を認知した。2015年は54人だった。認知被害者のうち、性的搾取目的の女性の人身取引被害者は37人(2015年は20人)、労働搾取目的の人身取引被害者は4人(2015年は7人)、労働搾取目的の人身取引被害者で性的搾取の人身取引でも搾取された可能性があったのは9人(2015年は27人)だった。警察庁は、被害者を認知し、利用可能な支援サービスを被害者に紹介するため、国際移住機関(IOM)作成のハンドブック、および人身取引対策関係省庁連絡会議の手引書を利用した。警察庁はまた、潜在的な被害者向けに、緊急連絡先情報を10カ国語で記載したリーフレットを配布した。政府は、脆弱な人々の中に、被害者がいるかどうかの確認審査も、被害者認知も十分行わず、このことが保護の取り組みを阻害し続けた。2016年に認知された男性の被害者は2人のみだった。送り出し機関および受け入れ機関双方による借金による束縛、パスポートの取り上げ、法外な罰金の賦課、契約によらない違反行為に起因する恣意的な減給、強制送還の企図、および拘束等、人身取引の兆候という実質的証拠があるにもかかわらず、政府は技能実習制度における強制労働の被害者をこれまで1人も認知していない。商業的な性に関与させられた児童として警察は577人の児童を認知したにもかかわらず、政府が性的搾取の人身取引被害者として公式に認知した児童は10人のみだった。被害者の中には、人身取引犯からの報復の恐れや、被害者を援助する政府の能力に対する懸念から、当局との接触に消極的な者もいた。警察の中には、性的搾取を目的とした人身取引の潜在的な被害者である児童の一部を、非行少年として扱い、人身取引犯罪の可能性がある事案として捜査せず、代わりに、児童に対して素行に関するカウンセリングを行う場合もあった。その結果、こうした児童は人身取引被害者として公式に認知されず、特化した支援サービスを紹介されることはなかった。

政府には人身取引の被害者に特化した支援サービスが依然として欠けていたが、日本の婦人相談所シェルターおよび配偶者による暴力の被害者向けシェルターに対して資金を提供し、これらのシェルターは認知された被害者のうち15人(2015年は21人)を支援した。その他の被害者は、非政府組織(NGO)のシェルターで支援を受け、そこでは被害者は政府の助成による医療を受ける資格もあった。もしくは、被害者は本国に帰国あるいは自宅に戻った。しかし、NGOのシェルターで支援を受けた被害者数は不明であった。政府は、シェルターでの男性被害者の保護に対して2016年に350万円(2万9840ドル)を充当し、本報告書の対象期間中、2人の男性被害者を支援した。婦人相談所シェルターは、 食料、生活必需品、精神的ケアおよび医療費を提供し、施設職員の同行のもとで被害者の外出を許可した。被害者向けの利用可能な支援サービスとその質は、所在地により異なった。より多くの人身取引事案の経験を持つ職員がいる都道府県は、支援サービスに関してより多くの実践知識を持っていた。

ある国内のNGOによると、外国人の人身取引被害者は、日本人被害者が利用可能な社会的支援サービスの全てを受ける資格はなかった。政府が出資する司法支援センターは、刑事および民事のいずれの訴訟でも、困窮した犯罪被害者に無料で法的支援を提供したが、このような支援サービスの利用を申請または受けた人身取引被害者の有無は不明であった。政府は、国際機関を通じて、外国人被害者にカウンセリング、一時避難、社会統合および帰国支援を提供する事業への資金拠出を継続した。本報告書の対象期間中、労働搾取目的の人身取引被害者1人を含む、23人の被害者が同事業を通じて支援サービスを受け、母国に帰国した。ある国内のNGOからの報告によると、警察の中には、被害者を説得し、人身取引犯に対する事件の証言をしてもらうために、被害者の意思に反して一部の被害者の帰国を遅らせようとした場合もあった。法律では、人身取引被害者の日本への入国拒否または強制送還を禁じている。しかし、脆弱な人々のに対する確認審査が不十分であったことは、認知されていない被害者の一部が、出入国管理法違反等、人身取引の被害を受けたことに直接起因する罪を犯したことで逮捕、強制送還されたであろうことを意味した。母国への帰国を恐れる被害者は、一時的、長期的、または定住という在留に関する便益を受けることが可能であった。政府は、2016年における被害者への長期在留資格付与を何ら報告しなかったが、政府は、短期の在留許可または資格を24人に付与した。被害者は人身取引犯に対して損害賠償を求める民事訴訟を起こす権利を有した。認知されていない可能性のある人身取引被害者を含む外国人労働者や、性的搾取の人身取引被害者の中には、賃金不払いに対して民事訴訟を起こした者もいた。しかし、賠償金の支払いを命じられた会社は破産宣告をすることが多かったため、賠償金の受け取りは依然としてほぼ不可能であった。

防止

政府は人身取引を防止する取り組みを強化した。政府は、人身取引対策の政府の行動に関する2回目となる年次報告書を発行し、人身取引対策行動計画で表明した目標に照らして、施策の取り組み状況を追跡調査した。政府は、パスポートの取り上げ等の違反行為に罰則を設けることにより、技能実習生の保護の強化を目指す技能実習制度改革法を2016年11月に成立させた。2017年1月には、技能実習制度改革法により、虐待を受けている労働者のための報告制度を設け、雇用状況および監理団体の調査を実施する監督機関が新設された。政府は、技能実習生が送り出し国にある募集機関を通して受けた負債を軽減するために、これらの国々との間で2カ国の協力覚書を目指す予定である。労働基準監督官および入国管理官は、2016年に、技能実習生の雇用に関連する23機関に対して合同調査を実施し、21機関で労働関連法違反を認めた。これらの事案においては是正勧告が出され、4件は送検された。法務省は2016年に企業2社、35の監理団体、202の実習実施機関に対し技能実習生の受け入れを禁止した。政府の対策会議は国内のNGOおよび有識者と協議し、「JKビジネス」(JKとは女子高校生を指す)としても知られている「援助交際」という現象とポルノ素材への出演強要の問題に関する報告書を発行した。

政府は引き続き、多言語対応の緊急時連絡ホットラインの電話番号を各地の警察および入国管理事務所において公示し、NGOおよび人身取引被害者の送り出し国政府に告知した。また、インターネット、ラジオ番組、ポスター、冊子を通じた情報発信とNGO、入国管理事務所、労働基準監督署、日本内外の外国公館へのリーフレット配布を通して、人身取引問題の啓発活動を行なった。児童買春旅行等の商業的な性への需要を減らすため、政府は引き続き、交通拠点などでポスターや冊子を配るとともに、海外で児童買春旅行に参加する日本国民を政府は訴追できる力があると警告する冊子を旅行者に配布した。政府は、海外で児童の性的搾取に関与する日本国民を訴追する域外管轄権を有するが、本報告書の対象期間中、そのような訴追を何ら報告しなかった。政府は、国際平和維持活動要員に対し、海外派遣の前に人身取引対策の研修を実施するとともに、外務職員に対しても同様の研修を行った。日本は、国連で2000年に採択され た人身取引議定書を締結していない唯一のG7参加国であるが、内閣は2017年3月に国会に法案を提出した。同法案が可決すれば、日本は人身取引議定書の締約国となることができる。

人身取引の概説

過去5年間に報告されたように、日本は、強制労働および性的搾取の人身取引の被害者である男女および性的搾取の人身取引の被害者である児童が送られる国であり、被害者の供給・通過国である。主にアジアからの移住労働者は男女共に、政府の技能実習制度を通じた一部の事案も含め、強制労働の状態に置かれる。北東アジア、東南アジア、南アジア、南米およびアフリカからの男性、女性および児童の中には、雇用あるいは偽装結婚のために来日し、性的搾取の人身取引の被害にさらされる者もいる。人身取引犯は、バー、クラブ、売春宿およびマッサージ店での強制売春のために外国人女性を日本へ入国させやすくしようと、外国人女性と日本人男性との偽装結婚を利用する。人身取引犯は、借金による束縛、暴力または強制送還の脅迫、恐喝、パスポートの取り上げ、その他の精神的な威圧手段を用い、被害者の移動を厳しく制限する。また強制売春の被害者は契約開始時点で借金を負っている場合もある。大半の被害者は、生活費、医療費、その他の必要経費を雇用主に支払うよう要求され、債務奴隷とされやすい。売春宿の運営者は、素行が悪いとして「罰金」を被害者の当初からある借金に加算することがあり、こうした借金の計算方法は、概して不透明である。人身取引の被害者は、東アジアや北米等、日本を越えた送り先での搾取に耐える前に、日本を経由することがある。

日本人、特に、家出した十代の少女や、外国人と日本人の間に生まれて日本国籍を取得した児童およびその外国人の母親もまた、性的搾取の人身取引の被害にさらされる。「援助交際」やさまざまな形態の「JKビジネス」が、日本人児童の性的搾取を目的とする人身取引を依然として助長している。巧妙かつ組織的な売春ネットワークが、地下鉄、若者のたまり場、学校、インターネット上などの公共の場で、脆弱な日本人女性および少女を標的にする。こうした女性や少女は貧困状態に置かれているか、あるいは精神障害がある場合が多い。中には人身取引被害者となる女性や少女もいる。モデルや芸能事務所の中には、詐欺的な募集手段を用いて、日本人女性および男性に不明瞭な契約書に署名するよう強要し、その後、契約違反、あるいはその他の法的手段を取ると言って脅し、ポルノ素材の製造のために性行為を強制する事務所もある。日本にある複数の機関は、日本人の父親とフィリピン人の母親との間に生まれた児童とその母親が日本国籍を取得し日本へ移住するために、手数料を取って支援すべく、こうした児童に接触する。日本入国後、これらの機関の役務を受けたことにより負った借金を返済するため、性的搾取の人身取引の被害者となる母親と児童もいる。日本人男性は依然としてアジアにおける児童買春旅行への需要の源泉の一部である、との報告が引き続きなされている。

強制労働の事案は、政府が運営する技能実習制度において発生している。この制度は本来、外国人労働者の基本的な専門的技能を育成することを目的としていたが、事実上の臨時労働者事業となった。「実習」期間中、多くの移住労働者は、技能実習制度の本来の目的である技能の教授や育成が実施されない仕事に従事さ せられ、中には依然として強制労働の状態に置かれている者もいた。多くの技能実習生は中国人、カンボジア人およびベトナム人であり、中には職を得るために最高で1万ドルを支払い、実習を切り上げる場合には、数千ドル相当の没収を義務付ける契約で雇用されている者もいる。この制度において実習生を執り仕切る国送り出し機関は、技能実習生に過剰な手数料および保証金の支払いを請求し、労働契約やその他の契約条件を履行できない場合、技能実習生に罰金を科す契約を義務付けていることが、依然として報告されている。脱走や技能実習制度関係者以外の人との連絡をさせないように、技能実習生のパスポートやその他の身分証明書を取り上げ、技能実習生の移動を制限する雇用主もいる。